株式会社ドトールコーヒー 一文無しから生まれた日本一企業 『ドトール』誕生の軌跡 株式会社ドトールコーヒー 名誉会長 鳥羽 博道  (2013年7月取材)

Vol.4 店舗展開

インタビュー内容

―店舗展開―

【齋藤】

ドトールで安いコーヒーをお入れになると、今まで卸しているところから、なんでそんなに安くするんだという批判、あるいは自分のところのコロラドのお客様がそっちに移ってしまうのではないかという心配や不安というのは当然あったと思います。

【鳥羽】

これについては神経を相当すり減らしました。ドトールコーヒーショップとコロラドというのは結構ぶつかる場面があるんです。そうすると実際にフランチャイズでやっているご夫婦で来て涙を流しながらやめてくれという方もいました。そうではないんです。コロラドというのはフルサービスだからある一定の年齢になるとなかなか現実的に経営はできません。ドトールコーヒーショップならば店長に任せて商売ができる。システムができ上がっているから。とにかくうちがドトールコーヒーショップをやります。成功したらお宅がやられたらどうでしょうかという形で、成功したら譲ってあげるんです。そういうことを一軒一軒調整しながらその反発を抑えて、だんだん体制が変わってきてコロラドをやっている方がドトールコーヒーショップをやるという形になってきました。

【齋藤】

これはどの業種でもそういうことは起きますが、では鳥羽会長がやらないからと言って歴史の流れを止めるとか、あるいは顧客のニーズを止めるということはできないので、いずれこうなってくる。そうであればそれをちょっと先読みしておやりになったということですね。

【鳥羽】

フランチャイズというと訴訟問題が起きてくるんです。私はそういうことをきちんと対応してきたので一度も訴訟問題が起きない。あくまでも経営の基本に置くのは人の不幸を作らない、断じてそれをやらない。ただ現実的には、チェーンをやってそれがうまくいかないというお店もあるんですね。そうするとそれを全部私の方で買い取る。買い取って近くで成功しているお店を償却後の金額で譲ってあげる。そうすると先方としては非常に償却後ですから助かるわけです。

【齋藤】

他のフランチャイジーはその事を当然見ていますから、鳥羽さんのところにいれば長い目で見てくれるぞ、助けてくれるぞ、ということになるわけですね。独立するとか、そういうこともあまりなかったんですか。

【鳥羽】

なかったですね。中に一軒だけ、他社のコーヒーを取った(他社に乗り換えた)という所がありました。それで成功したってことになると同業他社は全部そこに流れていく可能性があるので、これに対する危機感を感じました。ところが実際にそれをやってみると、売り上げがどんどん落ちてくるんです。どんどん落ちてきて、そしてある人を介して私のところに謝りにきました。それからそのお店を全部立て直してあげるということもやりました。その方からは今でも時たま手紙が来て、感謝されていますが、そんなことをやってきたということです。

【齋藤】

ここへ向かう前に下のカフェクリスタルで一杯いただいてまいりましたが、ほっとしてコーヒーを飲める。少し他のところよりは高いけどゆっくりいい雰囲気でシャガールの絵を見ながら飲みたいという人がいるんですね。

【鳥羽】

自分の理想のものを作りたいということで作ったお店です。

【齋藤】

ここまで人生悔いなしという感じですか。「因果倶時」というお言葉も書かれていますが。

【鳥羽】

商売を始めてしばらくしますと、こちらは死にもの狂い。その状況を社員が分かるわけないですから、おっとりと動いているわけです。毎日毎日、腹が立ってしょうがないわけです。その時たまたま「長の一念」ということを聞いたんです。長の一念というのは長と立つ人間の一念によってすべてが変わるんだというその時にずっと腹が立っていたのですが部下ではない自分自身に問題があるんだと長である自分に問題があると感じてから今度は社員に対して腹が立たなくなったんです。長と立つ人間の一念がすべてなんだということで、社員を責めるということではなく自分を責めなくてはいけない。

それから因果具時という言葉を聞いた時、これは商売の上でずいぶん自分にプラスになりましたが、現在の果を知らんと欲すれば、過去の因を見よ結果というのは過去の原因の積み重ねによって今日がきている。未来の果を知らんとすれば現在の因を見よ、将来自分がどうなんだろうかと考えたらば毎日毎日の積み重ねが未来につながるのだから、今あなたのやっていることを見れば分かるじゃないですかと解釈したわけです。

それを聞いた時には1分1秒1時間おろそかにできないと。息が詰まるような。変にくそまじめなんです。こうと思うとそこに入ってしまうということで、まさに1分1秒1時間おろそかにできないという感じになりました。


経営者プロフィール

氏名 鳥羽 博道
役職 名誉会長
生年月日 1937年10月11日

会社概要

社名 株式会社ドトールコーヒー
本社所在地 東京都渋谷区神南一丁目10番1号
設立 1962
業種分類 小売業
代表者名 鳥羽 博道
従業員数 926名
WEBサイト https://www.doutor.co.jp/
事業概要 コーヒーの焙煎加工並びに販売、食品の仕入れ、販売及び輸出入、飲食店の経営、フランチャイズチェーンシステムによる飲食店の募集及び加盟店の指導
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