Vol.3 未曾有の危機を乗り越えて
インタビュー内容
-未曾有の危機を乗り越えて-
【大隅】
3代目ですので、よく言われるのは、1代目が興した会社を2代目が守り、3代目が潰すと。ですから潰さないことは念頭に。なかなかそんなに自分の思うようにということはできないと思います。
私は楽観的なので、初めのうちは運だと思います。運と申し上げましたのは、このボタンという仕事を子供の時に父から説明を受けたときに、ボタンというのは化粧品と同じぐらい、もうかるんだよと言われまして。その理由は、世界中でボタンというのは家内工業なんですね。
具体的にどういうことかと言うと、例えば、100年以上前から日本でつくられている貝ボタンであれば、まず穴を開けて、丸いタブレットをつくる。それを平らにする。磨く。形を削る。穴を空ける。今いくつか申し上げましたけど、すべての工程ごとに他人の所に移って行くんです。そのたびに、利益が乗りますから、当社のように素材から製品まで一貫生産している所は、多種多様な加工屋さんがやっていた工程の利益を全部丸取りしているわけなので、利幅が非常に高かったと。
そういう利幅が高い中で、販売店さんのお客様と協力しながら、しばらくは時代の単価要請に対応ができたんですね。ただやはりバブルの崩壊以降、リーマンショックと非常に厳しい波がまたやってきましたので、このリーマンショックだけは、ちょっと状況が違いました。毎年高まっていく海外縫製をするなかで、現地調達、現地物流、いわゆる日本から送りつけていた付属品を、全部縫製する現場で調達して完成品にしてしまおうという究極のニーズ、それが少しずつ高まって来ている。それを何とかシェアアップ、占有率アップで補えば、売り上げ、利益は維持できるかなという政策方針で進めていたわけですが、リーマンショックだけは別で、これはもう百貨店さんへの影響が大きかった。当社の場合には高級品質のボタンが主流でしたので、百貨店さんで売られている服に付くボタンがメインターゲットだったんですね。
百貨店さんが単価をやはり半値7掛けにしたいとおっしゃる。当然7掛けの商材にする時にボタンも30%引いてくれますかと言っていただければ、できた物もあるんですが、それは言えませんよね。もしできたら、今までどれだけもうけていたんですかと言われてしまうので、言わないですよね。
したがって、アパレルメーカーさんが一斉にされたのは、中国に渡って、中国で調達できる資材をかき集めることだったんです。当社も中国に支店はあって、お客様がいらっしゃるんですが、例えばお客様が中国へ出張されたアパレルさんにボタンを紹介する時に、アパレルさんはこれ日本人がつくったボタンだよね、こんないいボタンじゃなくて、もっとひどいボタンでいんだよとおっしゃる。もう見た瞬間に値段も聞かずに、いらない、もっと安いボタンを見せてくださいと。そういう状況がリーマンショック以降、一気に進みましたので、改めてはやはり売り上げが下がるという状況になりました。
ここは、これまでのようなのんきなことではやっていけませんでしたので、社員一斉に協力をしていただいて。元々当社の社風として、会社を辞める方が少ないんですよ。ずっと当社にいていただく社員が多くて、500名を超える社員がいるわけですが、その500名が一丸となって、自信を持って動くと。
そういった社員が みんなで我慢を共有しようとしています。実際に先代の時には、バブルの崩壊で、売り上げが下がった時に一度リストラはしているんです。私は同じように売り上げは下がっていますが、リストラだけは絶対にしないということで、社員に協力をしていただいて、賞与をぎりぎりの所でやっていただくとか、一部給与カットということもしながら、いわゆるワークシェアという形を取って、なんとか乗り越えているという状況です。

経営者プロフィール

氏名 | 大隅 洋 |
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役職 | 代表取締役 |
会社概要
社名 | 株式会社アイリス |
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本社所在地 | 東京都千代田区東神田3-5-11 |
設立 | 1946 |
業種分類 | その他の製造業 |
代表者名 |
大隅 洋
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従業員数 | 456名 |
WEBサイト | http://www.iris.co.jp/ |
事業概要 | ボタン、アクセサリーなどの服飾資材及びファンシーグッズ、エラストマー加工品、プラスチック精密成形加工品の生産・販売、異材質結合関連商品、金型の設計・製造、健康・美容関連商品 |