Vol.4 “究極のサービス”を実現するために
―“究極のサービス”を実現するために―
【井上】
もっともっときれいにできないか、とか、工夫する余地がないのかと常に思っています。今も言っているのですが、全体をもっと(本家の)ハワイアンズ、ポリネシアンズみたいな感じにできないものだろうかと。元々は、やはり温泉旅館が大きくなったようなものですから、従業員もそういう意識はあるわけです。そういうのを少しずつ変えていこうよと。いわば逃げになってはいけないよね、ということです。 今の時代に合った形に変えていかなければいけません。今の時代はやはりファミリー。もちろん色々なことが変わりつつあるのですが、どうしても根っこのところで残っている部分があって、やはり我々はお客様一人ひとりをもっとターゲットにしてサービスを展開していかないといけません。
どうしてもまとめてということになると、サービスが雑になるのです。だから、やはりそういうことに気をつけないといけない。仕事の1つ1つもやはりそういうようなことで、きめ細かくやっていって、お客様一人ひとりが満足できるようなサービスをやっていかないと、長生きできないというふうに思っています。そんなことをみんなに話しながら分かってもらいながら進めています。
おっしゃるように、急には変わりません。ただ、徐々に徐々に変わっていって、1年ぶりに来られた方が「随分変わりましたね」とか、「置いてある商品も変わっているし、フラガールのショーも随分進化した」など言ってくださります。
【聞き手】
そういうブランディングに、とても力を入れてこられているということですよね。
【井上】
そうですね。それは逆に裏返しでいうと、最初に申し上げた、震災からの復旧、復興を考えていったときに、少なくとも財務的にいうと、地震で価値が一気になくなったわけで、その分は借金として残ったわけです。とにかく震災前までに戻したいわけですよね。戻そうとすると、それはやや金融マンっぽくなりますが、要するに利益を稼いで、それで借金を返済してということを優先してやるわけです。そうなると、新たな設備投資は控えざるを得ないわけです。今あるコンテンツでどうやってお客様に喜んでもらって、さらなる収益を拡大していくかということを考えていくしかない。
やり方というのは、さらなる収益の拡大、無駄なコストを払わないようにというのは業務の効率化ですよね。このようなことをやっていく。その両方をやっていかないとだめです。従って、新たな設備をやらないで、これをどうやっていくかということが知恵の勝負。だからこそ、中をよく見ないとできなかったのです。
それから、僕がみんなに言うのですが、皆さんはいいものを持っているのに、ずっと慣れてしまっているから見えないんですよね。人から言われないと分からないということがありますよね。そういうことで言うと、僕みたいに外から来た人間が見て、ここいいですよ、ここ大事にしたほうがいいよという良い点をちゃんと言った上で、ここが残念ながら効率的ではないよね、そこはこう変えたらいいよと、改善点も伝えています。(できない理由として)「忙しくて」と言うから「それは忙しいよね」と。皆忙しいですからね。忙しいのをどうやったらもう少し楽になるかということを考えるのが、効率化ということなのです。
新たな仕事を増やすのではなくて、いってみれば、どうやったらうまくサボれるかということを考えるのが合理化とか効率化ということなのです。ですから、「どうすれば楽になるの?そのアイデアを出して」と話をするわけです。そうすると、みんなはやはり分かってくれるのです。
【聞き手】
日本人はサービスに対する要求がすごく高いですよね。それは恐らく全国どこに行っても、みんな同じように求めると思うのですよね。
【井上】
おっしゃる通りですね。そこはサービス業なので、できるだけ究極のところまで追い求めたいですね。ただ、きめ細かく、お客様についていればいいのかというと、そうでもなくて、お客様の要求水準に過不足なく答えるのが「究極のサービス」だと思うのです。そうすると、ほっといてくれというときに、つきまとうのは良くないですよね。
例えば、お土産を買いたいときに、これは何だろうなと聞きたいときにパッと説明してくれるとか。それこそ「May I help you?」ではありませんが、それはこうですよというようなことができるのがサービス業だと思うのです。そのためには、トレーニングをもっともっとやらないといけない。例えば、何でも相談ができるコンシェルジュみたいなものも本当はつくりたいわけです。それから、もっとお子さんの相手ができるようなサービス、ペッパー(ロボット)をようやく1台置きましたけど、色々なことをもっともっとやらなければいけない。サービスのレベルはまだまだ課題としてはあるように思います。
【聞き手】
空気を読むというか、何を欲しているのか、それこそほっておいてほしいのか、もっと話しかけてほしいのか。そういったところを読み取る力というのは、やはり人間ならではというところですよね。
【井上】
そうだと思います。そのために、やはりお客様をきちっとある種のセグメントをして、そのお客様にふさわしい部屋とサービスを用意するというのが基本だと思うのです。
昔のやり方で一気にお越しいただいて、一気にお帰りいただくというスタンスでやると、そこのサービスのレベルがなかなか上がらないわけです。このお客様はこういうお客様、このお客様はこういうお客様ということを、きちっと感度を高くこちら側のほうでしていかないといけない。そのための仕組みを我々の中でつくっていかないといけないということだと思います。本当にやりたいことは何ですか、それでしたらうちで提供できるメニューはこれです、などという感じですね。
それから、初めてお越しになられると、今度は逆にメニューが多すぎて分からないわけです。そうすると、おすすめプランとして、最初であればこれが標準コースですよとか、こういうのがいいのではないですかとか、お子様連れであれば、例えばこんなものはどうですかと、いくつかのプランをつくってお客様にアドバイスをして差し上げてというようなことも、ようやくガイドラインのようなものがつくれてきました。それは、「こういうのをつくったら?」と提案した結果、つくってくれて、それはそれでやはり評判がいいです。そういうのは大事だと思いますね。
経営者プロフィール
氏名 | 井上 直美 |
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役職 | 元代表取締役会長 |
生年月日 | 1950年11月6日 |
会社概要
社名 | 常磐興産株式会社 |
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本社所在地 | 福島県いわき市常磐藤原町蕨平50番地 |
設立 | 1884 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
井上 直美
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従業員数 | 593名(2024年3月31日現在) |
WEBサイト | http://www.joban-kosan.com/ |
事業概要 | レジャー施設『スパリゾート・ハワイアンズ』の経営、燃料商事事業、製造関連事業、運輸業 |