Vol.5 当事者意識を持たせる人材育成とOB・OGの活用
―当事者意識を持たせる人材育成とOB・OGの活用―
【聞き手】
色々なことに今チャレンジされている中で、人材の育成も挙げていらっしゃいますが、ここは非常に力を入れておられる部分でしょうか?
【井上】
はい。当社の強みは、とても人柄がよくて皆が一生懸命働いているということなのですが、平時に弱くて緊急時に強いのです。例えば、震災の時は、ある意味みんな昔からの顔見知りですから、あいつ困っているなというと、そこへいっぺんにいくわけです。昔からよく知っているから考えることも分かる、みたいなことがあるので、こうやらなければいけないとお互いの役割分担がパパッとできてしまうわけです。基本的に人柄がいいですから、お客様の役に立とうと思ってやられるのです。
ところが、平時はあいつがやってくれる、となってしまうわけですね。特に、新しいものにチャレンジしなくても私は困らないし、みたいなことが多いです。これは、豊かな土地であるがゆえの考え方なのです。そういう変えるところは変えていかないといけない。そのために、色々な人たちにその場の当事者意識を持ってもらって、社長指示なんかを聞きにくるのではなくて、自分で考えてベストの答えを出してくれと言っています。
ベストの答えを出すには、慣れていないとベストの答えにならないわけです。ですから、そのトレーニングをしなければいけない。そのためには、社長が役員を鍛える。役員はマネージャーを鍛える。マネージャーはその下を鍛えるというようなことをやっていかなければいけない。そのためには、みんながお友達でも困るし、お任せの乗っかりでも困るということなのです。これは別に、できあがっているわけではありませんし、これからも恐らく5年、10年かかる課題だと思います。ただ、そういうふうにしないと、恐らく、変な話ですが、経営者が1人という企業よりも、経営者が10人とか20人とか、経営者の補佐が50人もいるような会社のほうが強いに決まっているのです。
軸は企業理念がありますから、そういうベースの中でお客様のためにと思って考えたことが、例えば、条件が同じだったらほかの人も同じように考えられるというような、ある種のトレーニングですよね。そういうのは結局何から出てくるかというと、方針を出したからには、OJT、要するに実務の中で覚えるしかないわけです。だから、そういうのは同じ考え方を持っている人を、取締役会で議論をして、こうだよねという人にボスになってもらって、そういう人たちから個別の仕事の上で指導をしてもらうというような格好でやっていくということです。これはそう簡単に変わるわけではありません。せっかちにやるつもりはないですが。じわじわとやっていきたいなと思っています。
基本はやはりお客様から評価していただけるようなサービス産業にどれだけなれるのか。要するに、私が逆の立場だとすると、今度休みが取れるな、どこに行こうかなというときに、私に様々な選択肢があるわけです。そういう中で、ハワイアンズに行こうと思ってもらうために、やはり色々なことのPRもして、進化もさせないとハワイアンズが出てこないですよね。
【聞き手】
ご就任されてから、女性の活用や、OBの方やOGの方の活用も非常に積極的に進めていらっしゃるのですよね。
【井上】
そうですね。これは人事部長と話していて、「人が足りません」「じゃあ、もっと採ったら?」「色々やっているのですが…」ということで、「何をやっているの?」と聞くと、地元の募集紙に出している。なので「OGやOBはどこにいるとかリストをつくってあるの?」と聞くと、「いや、ありません」と言うのです。「それは少しだめなんじゃない?」といいました。
僕が前にいたところでは、必ず辞めた人については会組織にして、そこの方々に会報誌か何かを送って、お子さんが小学校の高学年ぐらいになったら、「働きませんか」と勧誘をして、そろそろ働いてもいいねという人たちに来てもらっています。そういう人たちは初歩から教える必要がないでしょう?例えば、お金なんか昔ちゃんと数えているのだから、ああいうのは手が動くのだからという、そういう方々は絶対に間違いがないと。1円の大事さをみんな知っている人だから、即戦力ではないかと。他から来て教育するよりも、よほど早い。だから、そういう人たちを採用しようと。
だから、当社も辞めた人たちがいるでしょう。そういう人たちに来てもらえばいいじゃないかと。それは、女性で辞めた人、あるいはOBで定年退職した人で、プラプラしているのだったら手伝ってよと呼びかけてもいいじゃないかと。なぜなら、うちの会社を知っているし、そういう方々はハワイアンズに愛着があるから、多少口うるさいかもしれないけれど、絶対に役に立つ。だから、そういう方々にピークのときにはお願いしたら?とか言っています。
大体そういう組織を最初からつくっておけばいいので、これからは必ず、そういうOBの会とかOGの会のようなものをできるだけきちっとメンテナンスをして、そういう人たちにいざとなったら手伝ってもらう。特に、ハワイアンズは繁閑の差が大きいわけです。特に、夏のピークの2〜3週間というのは、本当にお客様に申し訳ないぐらいお越しいただくのです。そうではない真冬なんかだと、実は、温泉地だからもっとお越しいただいてもいいはずなのですが、なんとなくプールのイメージがあって。夏になると盛り上がるけれども、冬になると寂しくなる、みたいなところがあるわけです。
そこはもっと増やしていきたいというのは課題ですが、明らかに業務の繁閑があるので、そこに必要な人間を手当てする。そこの仕組みは必要だから、やはり色々な人が参画できるようにする。私はまだできていませんが、短時間勤務ができてもいいと思っています。正社員だけにこだわらないで、3時間でやってくれるのだったら、3時間でつないでいけばいいよねと。ただし、そういう業務の形態にするには、引き継ぎがしっかりできないと、お客様にご迷惑をおかけするわけです。では、引き継ぎのやり方をどうすればいいのか。従来だと口頭なのですが、そんなのはだめだねと。やはりそういうのはIT化をしてすぐに分かるようにする。どのお客様から何を頼まれて、みたいな情報がすぐ分かるようにする仕掛けも、しっかりやらなければだめだと思います。全体的にちゃんと装備をよくしないと難しいでしょうね。
経営者プロフィール
氏名 | 井上 直美 |
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役職 | 元代表取締役会長 |
生年月日 | 1950年11月6日 |
会社概要
社名 | 常磐興産株式会社 |
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本社所在地 | 福島県いわき市常磐藤原町蕨平50番地 |
設立 | 1884 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
井上 直美
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従業員数 | 593名(2024年3月31日現在) |
WEBサイト | http://www.joban-kosan.com/ |
事業概要 | レジャー施設『スパリゾート・ハワイアンズ』の経営、燃料商事事業、製造関連事業、運輸業 |