株式会社ラック 24時間365日体制での顧客情報管理を実現した組織づくりの秘訣 株式会社ラック 元取締役会長 髙梨 輝彦　 (2016年12月取材)

―ラック 誕生秘話―

【聞き手】

次のステップへの転機はどのようなことだったのでしょうか？

【髙梨】

それは、今は亡きオーナーですね。そのオーナーは実は大企業に勤めていたのです。石油会社でシステムをやっていて、その会社がM＆Aで合併されました。1つは営業会社となり、もう1つは技術の会社になりました。そして技術の会社にいました。ある意味飲み込まれてしまったので、皆さん先を考えて上司からどんどん退職し、別の大手技術系の企業に転職していってしまったのです。

ところが、当社のオーナーは最後まで面倒を見て、そうしたところに行きませんでした。そうしてこの業界に来たのです。その時のオーナーの年齢は36歳くらいだったと思います。（僕と）7つ違いだったので。その会長（オーナー）と（僕は）出会い、これから会社を変えようとなりました。僕も生意気でしたので、年功序列を壊してくれたり、今までにない会社の組織の人事を実行してくれたりしました。その方が、実はオーナーだったのです。前の会社でも色々なイノベーションをしようとしてきて、それがたまたま経営とぶつかって抜け出して設立したのがこの会社です。その時、僕は34歳でした。そしてオーナーが41歳だったと思います。それが最初でした。3人で抜け出しました。ただ、とにかく退職したのものの、仕事も何も決まっていませんでした（笑）

【聞き手】

何か当てがあったり準備をされていたりというわけではないのですね？

【髙梨】

そうですね。ただ、やはり運というのがあるのだと思うのですが、たまたま前の会社の時に付き合いのある人がいて、僕らが辞めると言ったら、応援してくれると（おっしゃってくださったんです）。そしてとある有名な会社の仕事を持ってきてくださいました。3人では手に負えないほどの仕事でした。「やりますか？」と聞かれて、やらないと生きていけないので、「やります」と答えましたが、人は誰もいないというのが最初のスタートです。

【聞き手】

実際に始めてみて、いかがでしたか？

【髙梨】

最初は3人しかおらず、社長がそのオーナーで、スタッフが僕ともう1人の仲間です。僕が結局現場も全て見ると言うことで、1人でお客様のところに行きました。（お客様は）「あなたに任せるから」と言ってくださいました。とはいえ、明日からどうしようかと。人は誰もいないので、昔の会社で付き合っていたパートナーの仲間が何人か来てくださって、それが最初のスタートです。

【聞き手】

順風満帆だったのですか？

【髙梨】

プロジェクトを始めてから4ヶ月後くらいに人手不足からトラブルが発生しました。色々なパートナーを集めないとならないという（状況の中）、あるパートナーがめちゃくちゃな状態でアウトプットしました。大変なことになりまして、「損害賠償を払え」と言われました。「どうしてくれるんだ」と。しかし、向こうのキーマンと「カットオーバーまではまだ時間がありますよね？」と話をし、「これが乗らなかったら損害賠償を払います。乗ったら（払わなくて）いいでしょうか？」と言ったら、「わかった」と言ってくださいました。結果的には乗せることができたのですが。

【聞き手】

もしそれがうまく行っていなければ、御社は……。

【髙梨】

ありませんでしたね。そのお客様（の場合）もキーマンが良かったんです。キーマンが自分で決めてくれたので（良かったのです）。今、SI事業をやっていて感じる難しさは、決める人がいないということです。ですのでプロジェクトが1つになっているようで、なっていないという状況です。ここが大きな問題です。

【聞き手】

なぜそういうことが起きるのでしょうか？

【髙梨】

まず、多様化したということもあるでしょう。そして、詰めるべきものを詰め切れていない、詰めたつもりが詰め切れていないのでしょうね。もともとコンピューターが浸透し始めた頃は、ユーザー部門の優秀な方が情報システム部門に入っていました。ですので、システム（の方）は業務を良く知っているわけです。そして情報システム部門が多くの会社で発足されていくうちに、そういう人たちがいなくなってくると、コンピューター技術はわかるけれども実際の業務がよくわからないという（状況に陥ってきました）。ですので、彼らが言っている言葉をきちんと理解してまとめることができません。そして、ベンダー側の人たちもそういう経験が浅くて、やはりお客様がいないと出来ないことですので、そのあたりがうまくスクラムが組めていないということが1つあるかもしれませんね。