【ナレーター】
『NEW YORKER'S Café』の成功で、自信が過信になっていることに気づいた小宮山は、30歳を迎えた時に3年間、再度社外に出て経営の本質を学ぶことを決意。多くの気づきを得たという当時をこう振り返った。
【小宮山】
まだまだ『NEW YORKER'S Café』というエリアのリーダーであり、全体の一部でしかなかったので、これを将来もっと大きな組織の中でやってしまうと、おそらく組織を壊してしまうのかなと思ったのです。
要するに仕事はチームワークでしていくものですから、そもそもベースに信頼関係がないといけない。「お前できないからだめじゃん」とか、そういうようなところで激論しているレベルだと、組織というのはやはりまとまらないですよね。
自分自身の謙虚さとかそういったことも足りなかったと、組織としてしっかりまとめていく上では、人間性といいますか、そういったものも高めていかないといけないなというふうに、ちょうどその頃思ったんです。
それまでは、『NEW YORKER'S Café』の担当のトップとしての肩書があったりだとか、小宮山という名字があったりだとかで、何というか、社内では、自分自身で頑張ればそれなりに結果が出るなど、恵まれた環境にいたわけなんですけども、外に出ればそういったものが全くなくなるわけです。それを非常に強く感じることができた。
一番良くなかったのは、とにかく自己中心的だったというところです。自分自身が頑張っているからその成果だと思いこむというか、まさに過信と言えますね。仲間のありがたさということが、その当時はそこまで感じ取れてなかったということもあったので、外に出てみて、一番下の立場で地べた這ってやることでいかに周りにサポートしてもらったか。
逆に今度は一番下の立場だったら、上の人たちをサポートしていかなければならないとか、準備をしっかりしていかなければいけないとか。当たり前の話なんですけども、そういったことを私は忘れていたんです。
お世話になった会社にも非常に感謝していますし、それがなかったら今もなかったと思っているくらい、非常に貴重な3年間でしたね。
【ナレーター】
『NEW YORKER'S Café』の業態開発に奔走していた当時、小宮山は主力であった喫茶室事業を重視していなかったという。
そんな時、ある出会いが喫茶室事業への見方を大きく変える転機となった。
【小宮山】
ある喫茶店の大先輩にお会いしたのですけども、その方は喫茶店というものに対して非常にこだわりを持っていて、喫茶店の本質とは何なのか、おもてなしや空間提供、まさにルノアールがやっていることを同じように追及してきた、素晴らしい経営者の方でした。
カフェでも同じことなんでしょうけど、「喫茶店という日本の文化、日本のおもてなしの心を表現する、そういう場をしっかり銀座ルノアールさんには守っていってもらいたいんだ」と言われました。
そういう喫茶店というものを介して、人の心を豊かにして幸せにする会社にしてほしい。さらには、「世界に発信してもらいたい」という話もいただきながら、これを私に滔々と語るわけです。
私の尊敬する先輩の1人でもあったので、何とか、「そうなのか」と、「喫茶店の魅力というのは、そういうことかな」ということも色々と感じました。
もう一度喫茶店の魅力とは何なのかと思い返してみた時に、やはり喫茶店はすばらしいと感じることもできたので、60年の歴史がある『喫茶室ルノアール』、もっと言ってしまえば喫茶店という大きな括りの日本の1つの文化を、もっと良きものにして、背負っていこうというような気概に、気持ちが切り替わる大きな転機でしたね。