【ナレーター】
保育サービスの拡大により、堅調に推移してきたベビー用品市場。
しかし2020年から続くコロナ・ショックの影響によるインバウンドの減少や、出生数の低下は深刻さを増しており、新たな需要の創出は市場の発展において重要と言っても過言ではない。
そんな中、ベビー用品市場におけるリーディングカンパニーとして業界をけん引する企業がある。コンビ株式会社だ。
ベビーカーやチャイルドシートを始め、多岐に渡る育児用品を提供する同社は、先進性あるモノづくりを原点として、子育てにイノベーションを起こすアイテムを次々に生み出す。
現在では機能性食品や化粧品、ペット事業も手掛けて国内のターゲットを広げるとともに、北米及びアジア市場を中心に、グローバルに事業領域を拡大している。
2021年1月よりコンビを率いる新社長が見据える、次代の成長ビジョンとは。
【ナレーター】
高校時代から英語に関心があった小堀は、野球部の部活動の後に英会話学校に通う日々を送る。異文化に触れた中で、あることについて衝撃を受けたという。
【小堀】
時間の概念です。日本人の場合、約束の時間に5分前とかに行こうと思いますよね。そういう概念が全然ない国の人もいるというのは衝撃的でしたね。
よくよく聞くと、すごく広い国の方で、交通網も発達しておらず次いつ会えるかわからないみたいな。極端な話、今回の出会いが一期一会になってしまう可能性もあると。
何時間待たせようが、会えること自体がすごいことだよね、という背景があるのを知りました。
日本人はまた会えることは当たり前ですよね。当たり前の上で何時に会うってなるんですが、海外の方は次会えるかどうかわからない。そういうベースがあるのかというのは衝撃でしたね。
【ナレーター】
大学進学後は、穀物に強みを持つ商社へと就職。当時の仕事内容について次のように振り返る。
【小堀】
先物商売なんですよ。先物商売ということは、1年後の商売を今契約するんですが、種を植える前に商売するんですね。
そうすると干ばつなどがあると、どれぐらい取れるかわからないですよね。ですので、天気予報の勉強をしました。
1年後の天気を予測するんですね。未だに明日の天気さえ分からないですよね。分からないにもかかわらず、でも何らかの予測をしないといけないので、そういう勉強をしました。後は為替ですよね。当然貿易をするので。
いずれにしても他の競合会社もいますからね。どっちがより正しい、良さそうな条件を出すかを競い合うわけですね、
今申し上げた為替の話もそうですし、天候の話もそうですし、どちらの意見が正しいのかをバイヤーの方が決めますので。そういう意味では非常に刺激的で、面白かったですよ。
【ナレーター】
その後、日本語教育の事業構想を持ったベンチャーへ転職。
なぜ商社からベンチャーへ移ったのか。その理由について小堀は次のように語る。
【小堀】
そもそもやりたい仕事だったんですね。
最初になぜ日本語教育ベンチャーに行かなかったかっていうと、その当時は日本語教師の資格がまだなかったんですね。それは誰でも働けるって裏返しなんですけれども、そうなると給与は当然低いです。
そういうこともあったんで、最初の商社に行った時には日本語教師ではなくても外国人と触れ合える機会はあるだろうし、十分に目的果たせるかなと思って行ったんです。
しかし途中で、「日本語教育ベンチャーつくるから来ない?」っていう誘いがあったので、では一回チャレンジしてみようかなということで転職しました。
【ナレーター】
転職から1年間、会社経営に携わった小堀だったが、事業は軌道に乗らず頓挫。区切りをつけて別の道へ進もうと考えた時に出会ったのがコンビだった。
【小堀】
色々お声がけした中で、このコンビだけがメーカーだったんですよ。また商社へ戻ろうと思っていましたので全然考えていなかったです。
コンビだけがメーカーで、ベビー用品。さらにその当時あまり気にしていなかったので、何をしている会社なんだろうなって思ったんです。
たまたまメーカーがコンビだったんですが、他になかったんですね、メーカーの選択肢が。その時に違うメーカーがあったらそちらに行っていたかもしれないですね。縁だと思います。
【ナレーター】
コンビ入社後は営業職として百貨店を中心に店舗を飛び回る生活を送る。その経験の中で、小堀が導き出した営業という仕事の本質とは。
【小堀】
おもちゃ売り場がありますよね。縮小の図を描いて、こういう配置にすることで売れるのではないですかという提案をするなどしていました。
後、提案が良ければイベントの時に場所を貸していただけるんですね。イベント用の配置も手で描いて。
要するに売り場のため、お客様のために役立たないと採用されないですよね。だからそういう絵をひたすら描いて提案し、これは違うよと言われてもまた描いて提案する。
ひたすら会社に戻らず、ずっと直行直帰して提案ばかりしていましたね。
しかしそういうのを繰り返すうちに評価される、認められる、採用されることも増えてきて。イベントをすると当然イベントキットみたいなものがあるわけですね。それを1日2、3カ所に設置し、そして土日には一緒に応援販売したりイベントをお手伝いしたりします。
それで終わると撤去しますよね。毎日搬入か搬出か販売か提案か、これをぐるぐるずっと繰り返していましたね。これが営業と思いますけどね。それは今もやっているメンバーはいますよ。
【ナレーター】
その後ベビートイのマーケティング、商品開発部門、執行役員を経て、2021年1月に代表取締役社長へ就任。コンビをどのような企業にしていきたいと考えているのか。その胸中に迫った。
【小堀】
まず社長一人では何もできないです。号令だけかけても何も進まないんですね。
ただ私の想いはある。それを実現するには、皆が心を一つにしてやってやろうという気持ちにならないといけないんで、そうさせるにはどうしたらいいんだというのを、私は考えてやっています。
どういう会社にしたいかというとちょっと漠然としているかもしれませんが、“感動創造ナンバーワン企業”などというのを考えました。
満足度調査をしても弊社の商品の満足度調査は非常に高い。ただし他社の商品の満足度調査も非常に高い。あまり差がわからない。
弊社なりに誇りを持ったものづくりをしていますけれども、評価される部分と分からないところがたくさんあって。あまり変わらないなというのは賛成してるんですね。ここを突き抜けたいと。それぐらい良いものづくりをしているので。
それをいかに伝えるかというのは、満足レベルではない。感動レベルにならないと駄目ですよという思いでの感動創造です。
それはものづくり、実際のものもそうですし、我々の従業員の最終的には気持ち、あとお客様と接する態度、全て感動創造に尽きるかなという想いですね。
【ナレーター】
感動とは日常生活に普通に存在しているものであり、特別なことではない。
これを与えられる存在になるためにはどうすればよいか、従業員一人ひとりが考え、実行できるかが大事だと小堀は付け加える。
【小堀】
ある映画を見て私も感動してしまいまして。結構泣いちゃったんですよね。
感動って簡単に言えばそういうことなんですよね。こういう感動をコンビのあらゆる活動、モノもそうだしサービス、接し方もそうですし、従業員同士のやりとりも全てそうなんですが、すべてのやり取りが鬼滅の刃を上回ったらすごいなと。
何も難しいことじゃないと。朝「おはよう」とみんな挨拶すると。暗く言うのか明るく言うのかはその人次第ですよね。
どっちが楽しい、素敵な気分になるかは明るく元気に言ったほうがいいですよね。そういうことで別に難しいことではないので、それを意識しながら共有しあっていることが大切だと思います。
【ナレーター】
社会人になってからは困難に直面したことはないと言い切る小堀。壁に直面した時の小堀流マインドとは。
【小堀】
問題が起きた時に嫌だなと思うのか、良しと思うのかというのは、後からでも思えると思うんですよね。先天的とかの話じゃなくて、そう思うと思えばいいので。後からでも全然できると思います。
やろうと思って飛び込んできますよね。逃げるのではなくて飛び込んでいくと絶対結果にしかならない。その体験を早く掴める。
飛び込んで行かないだけなんです。行かないからわからないんですよね。行けば絶対に良いことが掴める、これは間違いないです。行けば掴めるのでその感覚が分かれば同じになると思うんですよ。
逃げるより突っ込んで行ったほうが全然いいと思っています。
【ナレーター】
求める人材像について、小堀は次のように語る。
【小堀】
感動創造と私は思っているので、自ら感動する人でないと感動を与えられないと思います。
感動しやすい人というと漠然としていますが、感動しやすい人がいいかなということと、テクノロジーが非常に加速的に進歩しているんですね。
特にIT系でいいますと、そういう新しいテクノロジーにもすごく興味を持ちながら情報収集できる人。
この組み合わせからハイテクノロジーと感動できる心を大事にする、この組み合わせが私はすごく大事だなと思っています。
【ナレーター】
ものが溢れている現代社会においてもなお、ニーズが満たされない領域は少なからず存在する。
そういった潜在的ニーズを掘り起こせるかどうかが、メーカーとしてイノベーションを起こす鍵になると小堀は言う。
【小堀】
例えばよく言われる、iPhoneが出る前にiPhoneが欲しいというのは調査をしても出てこないんです。キーボードのない携帯が欲しいですという調査結果は絶対に出ない。
なぜなら氷山の下の方は我々自身が認識できていないんです。
例えばこれがなかったとして、今これがあったらいいよねと。こういったものを出し続けるのがメーカーだと思っています。
「これは今までなかったけど実はこれ欲しかったんだ」と。これは本当に欲しいものであれば、見せるとわかります。
IPhone もこんなんですってスティーブ・ジョブズが出した時の、そんなことは考えもしてなかったんだけれども、言われてみたらすごい、いいじゃんって思うじゃないですか。そういう活動がまだまだメーカーとしてたくさんできるなと思いますね。
絶え間ないマイナーチェンジというのは一方で非常に重要ではあるんですが、そればかりになるとやはり生活にイノベーションが起きないんですね。
時代にマッチしていないと思うので、より潜在ニーズを掘り起こすというところが重要だと思います。
【ナレーター】
今後の展望として、コンビを通じて、心の豊かさの醸成とテクノロジーを融合させていきたいと小堀は語る。
私が感動創造と言っているのは、心の話ですよね。心はずっとなくならないと思うので、ここの組み合わせ方というのが、今まで想像できないような形になると思うんですよ。
ベビー用品だからハイテクノロジーは関係ないよねという見方もあるんです。
でも一方で、子育てというのはテクノロジーによって進化する面が当然あると思うし、それによって心が逆に豊かになる可能性もありますよね。私はその組み合わせだと思っているので、両方持っていきたい。
そこのバランスがすごく難しいと思うんですが、そこを補い合ったベストマッチというものが、やはり時代時代によってあるなと私は思います。
【ナレーター】
感動創造ナンバーワン企業へ。理想とする未来像の実現に向けて、コンビの挑戦は続く。
経営者プロフィール
氏名 | 小堀 英次 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1966年7月1日 |
出身地 | 埼玉県 |
座右の銘 | 利他 |
愛読書 | 『生き方』稲盛和夫 |
尊敬する人物 | 両親 |
会社概要
社名 | コンビ株式会社 |
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本社所在地 | 東京都台東区元浅草2-6-7 |
設立 | 1957 |
業種分類 | その他製品 |
代表者名 |
小堀 英次
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従業員数 | 303名(単体) 1,089名(連結) 2,070名(コンビグループ) ※ 2022年12月末現在 |
WEBサイト | https://www.combi.co.jp/ |
事業概要 | ベビー用品/乳幼児玩具などの開発・製造・販売輸出及び技術供与 |