株式会社龍角散 ~背負った負債は40億円!窮地を救った大ヒット商品開発ストーリー~

Vol.3 経営危機に直面して

株式会社龍角散 代表取締役社長 藤井 隆太 (2015年8月取材)

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―経営危機に直面して―

【聞き手】

突然戻ってくることになられたわけですね。

【藤井】

別に社長として突然入るわけではなく、私はまずは現場を見させてほしいと言いました。ずいぶん抵抗されましたが、それでも私は行きましたよ。工場に通ってそこのマネージャーになって作業したり、営業も全国回ったりしましたしね。

【聞き手】

龍角散という、誰しも一度は目にしたことがある生薬を明治4年からつくってこられました。

【藤井】

そうですね。でもどんなにいい製品が、サービスがあっても、やはり時代が変われば陳腐化します。特にこういう身の回りの製品というのは生活の一部ですから、ライフスタイルが変わればついていけなくなります。だから、小林製薬にいるときから、いずれこういう製品が無くなる、うちの会社ももう駄目になるだろうなと思っていましたけどね。実際には、私は当時、財務状況はそんなに見ていませんでしたけど、現場に行けばわかりますよ。営業として回ったときにうちの製品がどこにあるかというと、店を見回してもなくて、後ろのほうの引き出しの中に入っている。あまり売れないからいいんだとか言われてね。そんなこと言わないでもうちょっと前に出してくださいよと言ってもそんな売れないもの置いておくだけでもありがたいとか言われてね。これはそんなもんだろうなと思いましたね。

【聞き手】

ショックではなかったですか?

【藤井】

私は外から見ていたから、駄目なのはわかっていました。いよいよ父の癌が再発してあまり長くないとなって、じゃあ代わるかということで代わったのですが、その時に初めて詳細な財務諸表を見せられて愕然としたのです。悪いと思っていたけれど、ここまで悪いかと。これは計算が間違っているんじゃないかと。当時の年商40億と同じくらいの有利子負債がありましたから。これは会社じゃない、会社として存続していること自体が不思議だ、無理だと。すべてのグラフが下がる、上がっているのは人件費と借入だけ。その傾向が止まらない。ということは(倒産は)秒読み段階だという感じでした。

【聞き手】

ここまで百数十年続いてきて、お父さまの7代目までやられているところ、8代目の自分でたたむというのは…。

【藤井】

健康産業というのは宿命的でありまして、特に医薬品産業というは比較的高度な技術を持っていますし、間違えると人様の健康を害すこともできます。だからあまり下手に利益だけを追うということはやってはいけないのですよ。非常に厳しい法律もありますしね。おかしなことまでやらないと会社が回らないのは、おそらくこの企業の社会的使命は終わっているから。だからそれはもう潔くクローズさせるべきだと。別に何年続こうが関係ない。無理すればみなさんにご迷惑をおかけするかもしれないからと。それはもう人知れず決めていましたよ。

【聞き手】

そうはいいましても、今のままだけじゃ駄目だから何か手を打たないと、色々なことを考えられたのでは?

【藤井】

色々とやりましたけどね。でもそういう時に焦ってやった製品というのはあまりうまくいきませんよ。それよりも一歩下がって、我々の存在意義は一体何なのかなというのを見つめ直すことじゃないですかね。

【聞き手】

そこで原点回帰をされた。

【藤井】

そうですね。当時の経営陣は大企業の縮小版のようなことを考えていました。大企業はこうやっていたから、こうしたらどうですか、などというのです。私は猛反対でした。そうすると、会社のいいところが出せなくなってしまうのです。

私は自分が音楽家だったからというのもあるかもしれませんが、音楽家が演奏するときに、難しい曲を練習してうまくなったからどうですかというのではお客様は聞いてくれません。そうではなく、私はこの曲をこう解釈して、私の技術でこういう風にアピールするので聞いていただけませんか、いかがですかとするのです。そうすると、もう1回聞いてみたいとなり、それがいいわけですよ。会社も同じなのです。他が駄目だから上手くなりましたよといってもあまり評価してくれない。悪いところもあるけど、うちしかできないとことがあります、この製品、このサービスがみなさんの生活にとってこれだけプラスになります、いかがですかというのが大事なところになります。

掘り下げてみると、この会社は駄目だけれどもいいところある、この龍角散という製品にも、古臭いけどすごくいいところがあるなと思いました。血中に入って効くのではないから、産婦人科の病院の先生が勧めていたり、ちゃんと喉の粘膜は活性化するけれど他の薬と飲んでも大丈夫だったりとかね。

妊婦さんも使えるということがユーザーの意見として出てきました。これはもっといいところを出すべきだと。だけど飲みにくいから、もうちょっと飲みやすくしようということもありました。そうこうするうちに、薬を飲むゼリーなども出てきて、これはうちしかできないことだいうことは、もしかしたら世間から見て必要な企業になれるかもしれないと、私もそうでしたから社員も感じていたでしょうね。

社長プロフィール

President's profile
氏名 藤井 隆太
役職 代表取締役社長

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