Vol.3 生き残りをかけた経営戦略
-生き残りをかけた経営戦略-
【山木】
正直にいうと、ある時、父親からそろそろ肩書きとして、社長にならないかという話がありました。私としても突然言われて驚いたという感じなので、経緯はよくわからないというところです。ただ創業者がいる間は、社長とはいえ、会長のもとで実務をやるという意識でやっていました。2012年に創業者である父が他界しまして、そこで初めて、代表権のある社長になりました。そこからが、本当の意味での経営者としての社長業の始まりになると、自分の中では認識しています。
父と考え方が違うところはありました。特に若い頃は、色々と意見が対立することが多かったのですが、私が30代になってちょっとしてからだと思うのですが、ある時、色々細かい意見の違いはあるけれども、大きく目指している方向は同じだということに気づきました。創業者の言うことはある程度は理解できたので、そこからはあまり細かいことでは対立せずに、できる範囲の中でオプションは色々あるはずなので、その中でいつもやっていこうという考えでいました。
やはり創業者の指示のもとでは、オプションの範囲は限られるのですが、自分が代表権を持つ社長になると、オプションの幅が無限に広がるので、色々な仮説を立てて、場合によっては極端な意思決定や、世間から見たら非常識な判断もあったと思います。しかし、色々とれるオプションが増えたという意味では父親がいた時の、いわゆる肩書きとしての社長と、亡くなってからの現在とでは、私としても180度違うなという感じがしています。
創業者から会社を継いで、一番始めにまずやったことは、当社の交換レンズのラインナップを一新するということで、そのプロジェクトに取り組みました。2008年にいわゆるリーマン・ショックがあって、私が生きている間にまさかこのようなことがあるとは思っていなかったので、衝撃を受けまして、本当に会社がどうなるかわからないというようなことも意識した時期でした。そこで、当社としても生き残りをかけて、とにかくいいものを写真が好きな方に繰り返し買っていただけるような商品を作り、お客様に愛されるブランドになろう、ということで2008年から取り組んで来ました。ただ、まだ取り組みが甘い部分があったなと、やはり2008年から3年、4年やってきて反省するところはあります。
もう一度オールリセットで、生まれ変わる気持ちでものづくりに取り組もうと思いました。当社の場合は、素晴らしい工場もありますし、素晴らしい技術者もおりますし、素晴らしい企業文化もすでにあったものですから、それをしっかりコンセプト化して、方向を明確にしてやれば、必ずいいものができるという確信といいますか、漠然としたものですけど、ありました。
以前のやり方をそのまま踏襲していては、自分たちがやりたいことや、次のステージに進めないので、一回リセットしないとダメだ、という気持ちで取り組んだのが、新ラインナップの切り替えです。当社では『SIGMA GLOBAL VISION』という名前で、単に製品のリニューアルだけではなくて、色々な当社の社内のコミュニケーション、あるいはお客様とのコミュニケーションなど、全体をパッケージ化したキャンペーンというかプロジェクトとして、プロダクトラインナップ、コンセプト、デザイン、それから製品の検査方法を一新して、全部見直した大きなプロジェクトでした。
『SIGMA GLOBAL VISION』のキャンペーンを導入すると、社内及び海外の子会社、関連会社に発表したときは、割と反対意見が多く、自分の中でこれはもうやりきるしかないと思い、話をして納得してもらって、協力してもらいました。その結果、お客様、また市場から大変評価をいただいて、「シグマが変わった」、あるいは海外ですとよく、「Sigma is back」、つまり「シグマが戻ってきた」と言われていました。我々は常に頑張っているつもりなのですが、リニューアルする前は停滞しているように外からは写っていた時期があったみたいです。その後、とてもアクティブに商品を出して、「Sigma is back」と色々な方から展示会などで声をかけられた時は、本当に嬉しかったですし、まだ商業的な成功を収める前でしたが、実感としてこれは成功しそうだなと思ったのはすごく記憶に新しいです。
経営者プロフィール
氏名 | 山木 和人 |
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役職 | 代表取締役社長 |
会社概要
社名 | 株式会社シグマ |
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本社所在地 | 神奈川県川崎市麻生区栗木2-8-15 |
設立 | 1961 |
業種分類 | 機械器具製造業 |
代表者名 |
山木 和人
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従業員数 | 1811名 |
WEBサイト | https://www.sigma-photo.co.jp/ |
事業概要 | デジタル一眼レフカメラ及びコンパクトデジタルカメラ、 一眼レフカメラ用交換レンズ、その他光学機器の製造、販売 |