株式会社メガステップ 人生の転機は不良映画！？業界に新風吹かす熱き男の挑戦 株式会社メガステップ 代表取締役社長 小山 宗一郎　 (2017年3月取材)

―業界活性化イベント『建設職人甲子園』とは―

【小山】

「若くてやり手だね」とか、「すごいね、小山さん」とか、色々と業界の人たちからも言われますが、全然嬉しくありませんでした。なぜかというと、社内からの会社に対する愚痴がすごかったんです。それに、離職率も半端じゃなかった。そういうのが聞こえてくるじゃないですか。会社の愚痴イコール自分に言われているようにすごく感じました。それでも社長でいなければならないとか、色々あって僕はずっと悩んでいました。でもどうしていいかわからないんです。何とかしたいけどどうしていいかわからない。要はそういうところを習っていないので（わからなかったんです）。

壁を塗る仕事は、師匠がいて、教えてもらってできるようになっていきましたが、今度は人を雇う側として、経営者としては何もわからない。ただ背伸びをし続けているだけの状態で何年も経っていって、色々と外にも出ていったりするようになった時に気づいていくんです。「あ、これは自分が変わらなきゃならないんだな」と気づいていくんですけど、そこからも変われないんです、わかっていても。それで、そういうことが色々とあった中で、自分が変わっていかなきゃならないんだなと（気づきました）。その時に先輩から「現場に光を当てなさい。やり方じゃない、在り方がまず大事だよ。だから、人を大切にしなさい」ということを教えてもらいました。

メガステップに入ってよかったと言われる会社をつくりたいと、本当にそういう会社にするんだと、目の前で人が離れていくのも嫌だし、辛いし、だからそういう会社にしたいんだということで、方向が変わっていくんです。だから、甲子園を立ち上げた理由としては、もっと人を大切にする会社をやっていかないとだめなんだと。そのために、自分たちは一体何のために現場に行くんだということを、もう一回学ぶ場をつくろうと。建設職人に、学ぶ場、成長する環境をつくるというのが1つ目の目的なんです。あともう1つは、ずっと経営していく中でベテランの職人もいたんですが、だんだんと単価が下がっていくんです。

例えば、壁を塗ってタイルを貼っていたところが、今は工場でタイルまで貼って塗装まで終わったものがトラックで現場に運ばれてきて、クレーンで吊られてはめ込んでバルコニーとか（がつくられています）。それで、どんどん上がっていって。そして、「左官屋さん、その隙間の穴を埋めてくれ。そんなの誰でもできるんだから、これだけもらっておけば十分だろう」というので、結局それが今まで活躍していた技術のある職人さんたちの仕事になっていったんです。やはり職人としても結構絶望的ですし、将来、希望も何もないという感じの姿も見えてきました。でも、そこにどうしていいかわからない。だから要は、いいモノを早く安くつくる時代の流れです。これは工場でつくったものを現場で組み立てたら出来てしまう。現場に技術が必要とされない時代になっていくわけじゃないですか。

一方、買う側に立ってみると、同じ建物を「こちらは職人さんが手作りしたので、値段が倍しますし、出来上がりも倍かかります」。しかしこっちは「工場でつくってきて、品質も安定していますし、すぐできます。半額です」と言われたら、こちら（工場でつくった方）を買うんです。ですから、これは仕方ありません。だったら、ここにどう自分たちが変化していくのかというのを考えていかなければならない、意識も変えていかなければならないと。だから変化に強い人になる。そこで、新しい時代に変わった時にもその中で生き甲斐とか働き甲斐を見つけていく。

そういうことをしていかなければだめなんだなと思った時に、2つ目の目的は、更なる生き甲斐と働き甲斐をつくるということなんです。そのために、建設職人の地位向上をしていこうと考えました。もう1つは、師匠の話なんですが、僕にそうやって仕事を教えてくれた師匠がいて、ある時、現場に来なくなったのです。それで、「あいつ最近現場来ないぞ。ちょっと帰りに見に行ってみるか」という話になり、僕も心配だから行ったら、1人で布団を握りしめて孤独死してるんですね。それを見た時に僕は動けなくなって。それも20代後半の時だったんですけど。一方では、このメガステップという会社で若い子たちいっぱい集めてきて、「お前ら稼いでいこうぜ。みんなで幸せになろうぜ」という会社をやっているわけじゃないですか。でも、一方では自分たちの尊敬する人たちが、自分たちの将来像として、今は若いからいいけど、あと何十年かしたらこうなるのかなとか、こうなってしまうのかもしれないなということが少し見えるって、その時に本当は蓋をしたんです。本当はこの子たちに「この業界来るな、絶対来ちゃだめだ」と言わなければいけない。だけど、自分の会社を守るために人をどんどん入れていたのだとか、色々なことに本当に気づいていった時に、まずそういうところから変わっていかないとだめだと思ったという感じですね。こういうことで『建設職人甲子園』を立ち上げました。