Vol.4 時間を売るビジネスモデル
―時間を売るビジネスモデル―
【太田】
まず映画館。映画興行と我々は呼んでいますが、映画館の経営がうちの会社のスタートです。映画というのは、商品として出発するものと、作品として出発するものと2つに分かれると思っています。商品というのは、映画を作るときに、100万人を対象にどういうものが喜ばれるか。僕らは10万人が対象で、いかにそれを商品として喜んでもらうようにアレンジし直したり見せかけとかそういうのもやるかという。
僕たちのやっている映画館は10万人対象の映画館で、映画が好きになればなるほど、作品の良さが非常にわかってくる。さらに我々はシネコンさんなんかと違って、1作品あたりに徹底して付加価値をつける。つまりイベント公開をやるわけですね。単純に言うと、監督さんや役者さんのトークショーとかをやりますし、場合によってはバンドを呼んできて、その主題歌の音楽をやるという。
つまり映画を上映するだけでなくて映画をそのまま味わっていただく。体験していただくというのが、我々のコンセプトです。それはうちの映画館もそうですし、うちが配給をするときも、そういうことを引っ提げて地方で公開します。あくまでも市場が小さいところ、ニッチなところを対象にしている映画ビジネスなので、言ってみれば本物志向というか。
ですが本物だけでは金にならないので、ちゃんと商売として成立するためにどういう仕掛けをするかという。これが映画ビジネスの特色だと思います。ですからテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、それからシネ・リーブル池袋、それぞれのエリアによって個性を変えています。新宿での楽しみ方と、有楽町の楽しみ方は全然違いますし、その劇場ごとにカラーを分けて、それぞれの専門性を分けていると。
ですから本当に映画のファンの方が、うちの映画館の会員になっていただければ、例えばフレンチとイタリアンと和食と、ラーメンはありませんけど、寿司というように、いろいろな映画の味わい方ができる。そういうのを味わっていけるのが、うちの映画館の特色。それをチェーンで構成しているという形ですね。
主力としているのは映像と飲食。それから中古マンションのリフォーム販売。バラバラで互換性がなさそうとよく言われますが、今世の中では物からコトへとよく言われていますよね。要するに物を取得したり消費したりという段階は終わって、いかにコト消費かと。人間にとって一番貴重なのは時間になってきていると思います。時間を買うというのが、現代の心を豊かにする手段だろうなと思っているのです。
僕がよく言うのは、映画というのは自分と向き合う時間を売る商売だということで、気持ちの切り替えを促すのも映画ですし、自分ともう1回向き合って、自分なりの人生を投影するのも映画。それが映画の、映画館の役割だと思っているのですね。
外食では、親しい人や愛する人と向き合う時間を提供するのが外食だと思っています。そこに料理という媒介があるだけで、外食というのはそういう時間です。家で1人でスマホやっているより、友達とワイワイ集まって、向き合っている方が、いろいろとまた新しい活力をもらえると思うのですよね。明日の活力を上げたいというのが、同じように外食にはあるので、そういうような外食産業をやりたいということ。
最後に中古マンションのリフォームは、家族と向き合う時間です。家族と向き合って、エンターテインメントも楽しいところで、最後自分と家族と過ごす時間に最適な空間を我々がお手伝いすると。普通の新築マンションだと出来上がったものを売るのですが、我々はオーダーメイドで『リノまま』というのをやっています。これは、あなた方が望む生活空間とライフスタイルにあわせて、私たちがマンションをご提供しましょうと。これも家族を向き合う時間を大切にすること。
つまり時間を売るというのが我々のビジネスだという風にありますので、時間を大事にして売れるものであれば(他の業態にも参入していきたい)。
経営者プロフィール
氏名 | 太田 和宏 |
---|---|
役職 | 代表取締役社長 |
会社概要
社名 | 東京テアトル株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 東京都新宿区新宿1-1-8 |
設立 | 1946 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
太田 和宏
|
従業員数 | 140名 |
WEBサイト | https://www.theatres.co.jp/index.html |
事業概要 | 映像関連事業、飲食関連事業、不動産関連事業、その他事業 |