Vol.3 疾風に勁草を知る ~リーマン・ショックからの再起~
―疾風に勁草を知る~リーマン・ショックからの再起~―
【ナレーター】
入社後、当時にはない新たな飲食店のブランド開発に従事。ブランドを次々に立ち上げたが、時代の流れがその勢いを阻んだ。
【秋元】
ちょっと小洒落た個室感のあるような、いわゆるダイニング的な和風のお店をつくったり、ちょっと和っぽいバーをつくったりというところでは、初めの5年くらいはまだその時にはないようなポジショニングのブランド開発をやっていきました。
同時に、そればかりやっていると時代がどんどん変わっていくと。(他社が)どんどん真似していっちゃうわけですよ。だから、自分のクリエイティブも限界がくるわけですよね。限界がくるというか、時代が変わってくる。色々クリエイティブする人が増えてくる。
【ナレーター】
その中で、次の一手として打ったのが海外ブランドの国内誘致である。
【秋元】
誰でも真似できるようなブランドではなくて、他の会社がなかなかできないようなブランドを誘致して、それを大事に育てていく。有名なブランドは当時、どうしても初めは赤ちゃんなので、それを大事に育てるということがとっても大事だと思っていて。大事に育てるっていうことを次の5年10年ではやっていきましたね。
【ナレーター】
その後、順調に店舗展開を進めていたが、2009年、リーマン・ブラザーズの破綻による世界的金融危機が起こり、ワンダーテーブルもその影響を多大に受けることとなる。
【秋元】
もう本当に象徴的ですが、2009年になったら、開けたお店、開けたお店が全く立ち上がらないのです。僕らの会社、実は上場時代の当時でいうと、2007年、その(リーマン・ショックの)1年前の業績が当時の最高売上、最高益でした。当然ながら上場していましたから、最高売上、最高益出すとマーケットも期待するわけですよね。で、リーマン・ショックの後、ほとんどのお店が立ち上がらない。その前の年に開けたお店も、いくつかアッパーなお店(価格帯を高く設定した店舗)だったので、(不況の煽りを受け)業績もどんどん下がっていくと。
その中でどうしようということで、毎月赤字を垂れ流すよりも、もったいないっていうとキリがなくなってしまうので、勇気をもってやっぱり閉鎖をしていこうということで2009年、2010年に思い切って再生計画もう1回つくって、閉店(が必要な店)は閉店していく、また、2010年には東証二部上場というのを諦めると、非上場化することを決めたわけです。
【ナレーター】
相次ぐ店舗の閉店と上場廃止。危機的状況が続いた中、秋元が大事にしていたのは「変化への対応」だった。
【秋元】
変化に対応することができれば、また再生できると思いました。ですから、そういう意味ではものすごく大変な苦労はしたんですけども、自分たちが頑張れば、この変化に対応していけばまた絶対再生できるっていう自信はありました。もちろん、店を減らすことは嫌だし、数が減ることは悔しいのですけど、再生する自信は個人的にはありました。
1番大事なのは何かって思った時に、時間差はあるのですけど、ある程度思い切って店を閉めて、もう1回、店のクオリティレベル、あと社員のモチベーションのレベルさえ保てば、ちゃんともう1回復活できるっていうシナリオが自分の中でありました。これをやれば絶対もう1回、強い会社をつくれるぞという思いではありました。
ただ、社員の気持ちが1番大事です。だからそこに対して非常にデリケートかつ、強い意志で彼らとはやっぱり接することを大事にしました。そこは1番しんどかったということじゃなくて、1番力を入れなきゃいけないというところが、やっぱり社員に対してだったんですね。
【ナレーター】
「疾風に勁草を知る」
当時、秋元が幹部社員に送った言葉だ。その言葉に込めた思いとは。
【秋元】
疾風なので、強い風がこれからも吹いてくよ、と。ここ2年くらいで20数店舗閉める、と。当然ながらポストがなくなる可能性が出てくるよね、でもそこで、勁草、つまり地に足を付いて僕たちが力をつけていく時期なのだ、と。そこをちゃんとみんなで乗り越えた時にもう1回、みんなへのチャンスも出てくるし、素晴らしい会社をもう1回つくれるのではないか、と。
だからもう1回、今踏ん張りどころだから、一緒に頑張ろうぜというような話を、「疾風に勁草を知る」ということを、みんなに伝えながら話をしました。
【ナレーター】
素晴らしい会社をもう一度つくるため、「2ヶ年計画」という会社再生計画を立案。そして2年後の2011年、見事当時の過去最高売上を達成する。
【秋元】
社員を辞めさせる計画ではなくて、会社を再生する、本当の意味でのリストラクチャーのプランをつくりました。だから、残念ながらお店が減ることによって、支配人やシェフだった人は一時的に支配人やシェフじゃなくなりますよね。でも僕らは、クビにするプランをつくったわけじゃないので、会社を良くするプランをつくったから、ポストは減ったかもしれないけど、結果的には社員を1 人もクビにしてないし、ほとんどの当時の支配人、調理長は辞めませんでした。
大事なのは、だらだらやっている人は困るわけですよ。だからポストは減ったかもしれないけどそこでもう1回、今は力をつける時期なのだ、みんなが成長しなきゃいけないのだ、ブランドをもっと磨かなきゃいけないのだと、そこはそこで競争していくわけです。
だからポストが減ったら減ったで、悔しい人もいるかもしれないけど、次のポストを狙うためにみんな成長しなきゃいけない、そんな環境をつくっていくわけですよね。だから結果的には、2ヶ年の再生計画というのはうまく達成できて、2011年には当時の過去最高売上、最高益っていうのを達成することができました。
経営者プロフィール
氏名 | 秋元 巳智雄 |
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役職 | 代表取締役会長 |
会社概要
社名 | 株式会社ワンダーテーブル |
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本社所在地 | 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー22階 |
設立 | 1946 |
業種分類 | 小売業 |
代表者名 |
秋元 巳智雄
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従業員数 | 2506名 |
WEBサイト | http://www.wondertable.com |
事業概要 | 『ロウリーズ・ザ・プライムリブ』『バルバッコア』『モーモーパラダイス』などの飲食店の経営、フランチャイズチェーンシステムによる飲食店の募集・加盟店の指導 |