株式会社カオナビ プライム上場企業を始め4000社以上が導入する人事管理システム「カオナビ」を展開するグロース上場企業 株式会社カオナビ 代表取締役社長 Co-CEO 佐藤 寛之  (2024年10月取材)

インタビュー内容

―起業のきっかけとなったアイスタイルでの気づき―

【ナレーター】

自分がやりたいことを貫くという信念のもと、大手外資系企業に就職。ITとビジネスの基礎を身につけた後に、大学の先輩で、かつ、新卒で就職した企業の先輩でもあった、株式会社アイスタイルの創業者、吉松氏に誘われ、アイスタイルへ転職。技術者から事業責任者、人事責任者として成長中のアイスタイルで仕事をする中で、人材マネジメントの難しさを肌で感じたことが起業に結び付いたと柳橋は語る。

【柳橋】

人材マネジメントという、要するに上司と部下がいて、組織の中でやりくりして仕事をしていくということ全般のこといったときに、なかなかうまくいかないものだというのは、非常に感じていました。みんな思いは共通しているのに、ああでもないこうでもないということが発生して、組織になるとなかなかまとまらないものだなというような(思いを持っていました)。中間のマネージャーが結構苦しんでいる姿も見て、組織をうまく回すというのは、すごいまた別の発想が必要だとか、色々な難しさがあるんだという、アイスタイルがその壁にぶち当たっていたからこそ、人材マネジメントというテーマに気づいたのです。

やはり一生そこで働くという感覚は持てないと思いましたし、それに、組織にあまり帰属意識をもたないタイプなので、吉松さんとは今でも仲は良いですが、吉松さんにずっとついていくかというと、そんな感覚も持てないと思っていました。もともとアイスタイルがゼロから立ち上がっていく姿を見ていたので、なんというか、生意気だったので「俺でもできそうだ」と思ってしまったというのがあります。別に商機なんて何も考えたことはありませんでしたが、とにかく吉松さんができるなら俺にもできると思った。それに尽きますね。あとから大いなる勘違いだったということは嫌というほどわかりましたけど。それでも当時は素直に、「俺でもできそうだからやってみよう」という感じでしたね。怖いとかリスクとかは全く考えていませんでした。

―収入ゼロの窮地から奮起できた信念―

【ナレーター】

2008年、株式会社カオナビを設立したが、事業内容が決まらないままリーマン・ショックが起こり、収入減がゼロになるという窮地に立たされてしまう。一時は前職のアイスタイルへ戻ることも考えた柳橋だったが、なぜ自分が起業したのかという原点に立ち返り、自身の心に根差していたある想いに気づいたという。

【柳橋】

なんとなく自分でもできそうだと思って、吉松さんでもできそうだから起業したという自分のうがった勘違いはすでに反省しているんです。それは間違いだったと反省したのですが、それでも、自分で始めたということは、何か自分にやりたいことがあったはずだと思ったんです。そうでなければ普通は起業しないだろうと。自分をかなり自己研究したというか、当時、翻って考えた時に、さっき申し上げた人材マネジメントというのが、やはり自分の中で大事なテーマだったと気づいたのです。それを軸にした仕事をしたいと、心の底で思ってることに気づきました。それを確認できたので、だから頑張ってやっていたんですよ。しかし、その事業のネタがありませんでした。人材マネジメントというテーマはわかったけれども、事業のネタがないので、引き続き悶々としていた状態です。

【ナレーター】

人材マネジメントをテーマにどのような事業を展開していくか、思慮を続ける中、仕事の相談のために赴いた企業先から思いもよらない形で事業着想のヒントを得る。

【柳橋】

サイバーエージェントの曽山さんという、この業界では非常に有名な方なのですが、アイスタイルに勤めているときからお付き合いがあったので「何か仕事を頂けませんか?」と相談に行ったら、その時たまたま「顔写真を並べてやるシステムが欲しい」という(お話を頂きました)。顔写真を並べるということに何の意味があるのかと、何回も曽山さんに聞いたところ、それを人材マネジメントに使っているという話がありました。「社員の顔写真で名前を覚えるということは、人材マネジメントにとって非常に重要だ。サイバーエージェントはそういうふうに頑張っている」というようなことを言われて、「それはすごい面白い話だ」と思ったのです。それを商品化したら、もしかしたら人材マネジメントというものをテーマにした商品をつくることができるかもしれないと思ったんですよね。

それを「良いチャンスを見つけたんですね」とよく言われるんですけど、どちらかといえば、それ以外なかったからそれにすがったという感じです。

―150万人の人材情報の一元管理化を目指す理由―

【ナレーター】

従業員の情報が顔写真と合わせて並ぶクラウド人材管理ツールで大手企業をはじめ、1000社以上の導入実績を誇るカオナビ。柳橋が見据えるカオナビの未来像とは。

【柳橋】

まずは、2020年度に3,000社のお客様に使っていただくということを目標にしています。

もっと中長期な考え方でいうと、その2020年度3,000社のときに、カオナビに登録してくださっている人材情報の数がだいたい150万人分になる予定です。今50万人ですが、それがだいたい3倍になって、150万人になる予定なんですよね。そうすると、世の中のビジネスマンの人材情報をクラウドで一元化している会社という位置づけに、おそらくなるでしょう。人材情報のマスターデータをカオナビで一元管理することによって、例えばカオナビである研修を受けるといったら、150万人の人が自由に受けられる世界が来る、あるいは、カオナビで人事評価を受けたら、150万人の人事評価結果がカオナビに蓄積されているなど、要するに150万人のビジネスマンのデータをクラウドで一元化することによって、色々なビジネスチャンスが生まれてくると思うんです。色々なお客様のメリットも出てくると思うので、そういうプラットフォームを築いていくということが、僕らのビジネスモデルの根幹になっています。

僕らは、どちらかといえば新規事業については「派生させていくビジネス」だと定義しています。150万人のデータベースと全く別のところで新しい事業をやろうということはそもそも考えていないという感じですね。ですから基本的にはカオナビの派生する中で全部考えています。

―仕事を楽しむための価値観と視聴者へのメッセージ―

【ナレーター】

求める人物像に仕事というゲームを一緒に楽しめる人を挙げた柳橋。その真意と仕事に対する価値観について次のように語る。

【柳橋】

仕事というものを、僕は結構相対的に捉えたいと思っています。仕事の成功が人生の成功で、仕事の失敗が人生の失敗だというのは、少し寂しい人生だと思っていて。ですから、もっとプライベートもあるし、家族もいるし、趣味もあるし、友達もいるし、何もしない休みの日も大事です。仕事というのはあくまでも人生の一部だと捉えた方が、僕は人間というのは素敵に生きられるなと思っているんですよ。

逆に言うと、仕事100%の時代もあったので、その時を翻って見ると結構辛かったと思っています。ですから仕事というのはあくまでも相対的に人生の一部で捉えた方がいい。サッカーの試合をやっている人というのは、90分は真剣にサッカーの試合をやっているかもしれないけど、ピーと笛が鳴ったら試合は終わりですよね。90分の中では1点でも多くの点数を取ると思っているかもしれないけど、ピーと笛が鳴ったらとりあえず終わりです。そういうのが仕事だと思うんですね。

そういうふうに仕事というのは相対的に捉えた方が他の余暇が充実するし、また、かえって仕事が楽しめると。だから仕事というのは、当社でいうと9時半から18時半でやりきって成果を出す、ある種、限定要素のあるゲームだということです。そこで部長や営業マン、エンジニアという役割が決まっているのだと。フォワードとミッドフィルダー、ゴールキーパーという役割が決まっていると。その役割で与えられる仕事を真っ当にやって、勝てれば良しというゲームです。そこで成功して有頂天になりすぎるのもおかしいし、失敗したからといって落ち込みすぎるのもあまり意味がないというふうに捉えたほうがうまくいくよねという考え方ですね。だから仕事でもうまくいかず、人間関係を崩す時もありますよね。

ただ、その時はそうだったというだけで、別に本質的にその人が嫌いだと思いこむ必要はないよねという、割り切りましょうというところも含まれています。その方が僕は幸せに生きられるかなと思っています。僕はよく仕事は仕事と割り切っているので、プライベートとは全くオーバーラップさせないと決めています。

―視聴者へのメッセージ―

【柳橋】

人口が減ってくる日本という中で、日本の経済はどうあるべきかとか、日本の働き方はどうあるべきかというのを、僕は結構真剣に考えています。そう考えた時に、カオナビみたいな人材情報を一元化したプラットフォームビジネスをつくっていくということは、僕はすごい社会的テーマを持っていると思っているんですね。それで日本の生産性を上げていくとか、日本の働きかたを変えていくとか、そういうことをとても考えているので、そういう社会的なテーマにすごい興味を持ってくれる人が会社に来てくれるということが、僕は一番嬉しいと思っています。そこをやはり僕はしっかり伝えていきたいなと思いますね。

【ナレーター】
顔、名前から個性や才能まで、会社が把握すべき人材情報を可視化するサービスを開発・提供する「株式会社カオナビ」。

タレントマネジメントシステム「カオナビ」は、最適な人材配置や抜擢につながる戦略的なタレントマネジメントの実現を支援しており、現在、プライム上場企業を始め4000社以上に導入されている。

近年では、人事業務のDXを推進する労務管理システムや、正しい経営判断を支援する予実管理システムをリリースするなど、多様な働き方ができる社会の実現に向け、挑戦を続けている。

「世の中にないプロダクトをつくる」という思いのもと、立ち上がったカオナビの軌跡と、創業者が思い描く未来像に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、佐藤は3つの要素を挙げる。

【佐藤】
まずこのタレントマネジメントという領域の大前提として、「正解がない」っていうことがポイントなんです。何をもってタレントマネジメントができているかっていうのは、その会社の置かれた環境とか、従業員とか組織の状態において違うと。だから、使いこなすことが非常に難しいシステムであるっていうのが、通常のシステムと違うところですね。

エンジニアの力を借りずに、人事の方が簡単に自社の人事制度やエンゲージメントの方法に合わせて、データベースをカスタマイズできることが大事なので、僕らはそのデータベースの柔軟性をひとつ売りにしてきました。

会社の従業員全員が使うものなので、ユーザビリティが高いとか、UXが高いということは当然必要で、そこは磨いてきました。

そして最後に、正解がなく、使い方が難しいシステムだからこそ、カスタマーサクセス、つまり「どう使うのか」っていうことを支援する、「カオナビキャンパス」という大学のようなものを開いて、12年やってきました。そこで、ユーザーの皆様に使い勝手を良くするノウハウをお伝えしています。この3つがおそらくカオナビが支持されてる理由だろうと思いますね。

【ナレーター】
佐藤のファーストキャリアはコンサルティング会社だった。営業、人材開発責任者としてキャリアを重ねた佐藤は、創業者である社長の側で、企業をつくり成長させていく過程を見て、かねてから関心のあった起業を考えるようになる。

そんな中で出会ったのが、後の共同創業者となる柳橋だった。

【佐藤】
会社をつくるには仲間が必要なので、優秀な人間にはどんどん会いたかった。そこで、人事をやっていると、いろんなヘッドハンターさんと仲良くなるので、面白そうな人がいたら会わせてくれと頼んで、自腹で会う機会をつくるのを毎週やっていたんです。

その時に紹介されたのが、先に独立してた柳橋という共同創業者でタレントマネジメントというか、人の配置とか評価とか、人材開発にまつわるところをシステム化しようという思いは一緒で。出会ったその日に一緒にやろうと意気投合したことを今でも覚えています。それが起業のきっかけですね。

【ナレーター】
2008年の創業以来、柳橋が代表取締役社長を務めていたが、2022年には佐藤が就任した。社長交代の裏側について、こう振り返る。

【佐藤】
正直に言うと、社長になったって感覚は今でもあんまりなくて。そもそも二人で原宿のアパートで始めた会社なんで。最初はなぜ柳橋が社長だったかっていうと、世の中にないプロダクトをつくろうって思った時に、頑固でエンジニアリングがわかる人間がやった方がいいだろうというのが二人の結論だったんです。

僕が当時社長をやっていたら、お客さんからいっぱいお金もらえるんなら、いろんな仕事を取ってきちゃう。そうするとプロダクトはできなくなるんですよね。僕がそういう仕事をとってくると、柳橋は「そんなの1億でもいらないから断ってこい」って。でも今思うと彼の方が正しいですよね。柳橋が采配を振るってくれたからこそ、カオナビという一つのプロダクトができたっていうことなんです。

一方で、ここ昨今は、一つのプロダクトを生み出すチームというよりも、もういろんなファンクションがあって、いろんな権限委譲がされていて、ステークホルダーもいろんなところにいて、こういったものを調整するとか、モチベートするとか、エンゲージメントするとか、つなぐとか、アカウンタビリティを発揮するみたいなことが経営者の能力として必要になってきている。

そうなると、バトンタッチしようかってことで交代しました。

僕も柳橋も社長というのはただの役割に過ぎないと思っていて。だからこそ、その時々の役割に最適な人間がやるべきだと思うのです。そういう価値観の中で当社は経営していますっていうことは、当社に興味や関心を持ってくださる方には伝えたいところです。

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経営者プロフィール

氏名 佐藤 寛之
役職 代表取締役社長 Co-CEO
出身地 東京都
略歴
上智大学卒業後、リンクアンドモチベーションにて、大手企業向け組織変革コンサルティング部門の営業および営業マネジャーを担当。その後、シンプレクスにて人材開発グループ責任者として、急成長ベンチャーでの人事業務に従事。2011年にカオナビを共同創業。2022年より共同CEO制を採用し、代表取締役社長 Co-CEOを務める。

会社概要

社名 株式会社カオナビ
本社所在地 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア 38F
設立 2008
業種分類 情報通信業
代表者名 佐藤 寛之
従業員数 347名
WEBサイト https://corp.kaonavi.jp/
事業概要 タレントマネジメントシステム「カオナビ」、労務管理システム「ロウムメイト」、 予実管理システム「ヨジツティクス」の開発・販売・サポート
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