―ブランド継承・維持・拡大の難しさを感じたエピソード―
【ナレーター】
コンビ入社後、名古屋への配属を経て、海外事業所の立上げのため、フランスへ転勤。
海外勤務を経て五嶋の心の中で生じたある変化とは。
【五嶋】
価値観の変化ですね。
土曜日、日曜日とやることがないので仕事をしに会社に出ます。そして、月曜日に「休みの日に自分に対して何をしてきた?」と、同僚の女性から問いかけがあるんですね。
「いや、会社に来ていたよ。」と答えると、「あなたは何のために働いているの?あなたの人生はどこにあるんだ?」と、真剣に議論し始めるんですね。というのは、一緒に働くメンバーの考え方を知りたいからだと、彼女はそう言っていました。
「なんで?」と聞くと、「いや、一緒に働くからでしょう。」と当たり前のように言いました。
自分は何のために仕事をしているかというと、やはり家族のためなんだなと。例えば、家族がいなくなったら、ここまでやる必要がないと感じる部分もあったのです。それだけやはり家族に支えられている部分があると感じましたね。
【ナレーター】
その後、前社長から社長就任を打診され、熟慮を重ねた上でこれを了承。
当時の心境について、五嶋は次のように語る。
【五嶋】
割と早い段階で受けさせていただいたというのが真実ですね。
悩んだのは、この会社では何が継承し拡大させていくべき宝なのか。それを徹底的に考えましたね。それがわかったのでお受けしました。
ただ、継続してビジネスをすることは非常に難しいんですね。このブランドを継承して維持・拡大していくために、自分は何ができるのかということを考えました。
そこで、経験を積んだり、色々な方たちとお会いして人脈をつくったり、他社とのアライアンスの部分も含めてやっていこうと。それを今、改革ということでやっていますね。
―ユーザーに支持される商品づくりとは―
【ナレーター】
ベビーカーなどの大型用品から哺乳瓶などの小物用品まで、品質を担保しつつ幅広いラインナップを展開するコンビ。
これらの源泉にあるのが、入社2年目に受けたユーザーからのクレームだったと、五嶋は語る。
【五嶋】
商品の使い勝手が悪いというお話を聞いた時に、手が使えなくて不自由だという点が大きな課題だと感じました。そうしたクレームには強いインパクトを受けました。
クレームから色々なものに繋がるというのは非常によくあることなのです。コンシューマープラザというのがその役を担っているのですが、とても大事な役目だと思いますね。
非常に忍耐を要する仕事なので、そこのメンバーについては本当に思い入れが深いですね。
そういう仕事をしていただいていて、それがまた製品になって返ってくる。これは非常に大事なことだと思います。
【ナレーター】
2018年秋には大手自転車メーカーと共同開発した、子乗せ自転車用チャイルドシートを販売予定。その開発の経緯に迫った。
【五嶋】
誰もが移動手段を持っています。その新たなツールとしてできたのが、子乗せ自転車なんですね。
子乗せ自転車やアシストバイクに乗せられるチャイルドシート。これも育児環境が変わってきたことによって見い出すことのできた、新しいルートだと思っています。
そういった環境の変化がまだまだありますから、お役に立てる部分がまだまだ多くあると思いますね。
【ナレーター】
育児環境支援事業やベビーカーの技術を応用した商品を展開するペット事業など、経営の裾野を広げているコンビ。
自社の事業について、五嶋は次のように語る。
【五嶋】
事業自身が社会貢献事業だと私は思っています。
ブランドや要素開発など、色々な部分での宝を使っていくことができると思うのです。育児用品を扱っているコンビだから安心だと思われる、それで入り口の壁が非常に低くなっているというのがありますね。
【ナレーター】
コンビの商品を安心して使うことができる。そうユーザーに感じていただける敷居が低い理由として、商品開発においてあるキーワードを意識しているからだという。
【五嶋】
この商品を買う価値があるストーリー。
ストーリーと一緒に商品を提供させていただいて、それを実感していただくことが次につながっていくんですね。次もコンビの商品を買いたいと。
それはなぜかというと、「ストーリーがコンビの商品にあるから」という形にしていきたいと思っています。コミュニケーションもそうですね。
この商品を使うことによって、赤ちゃんのお世話が出来るだけではなくて、お母さんと赤ちゃんとのコミュニケーションを産み出すことができますよとか。その付加価値のポイントをしっかり明示することが非常に大事だと思うのです。
例えばこの商品を使うことによって時間が節約できますよとか。この商品を使うことによって安全が倍になりますよとか。そういうものを全部付加していきたいですね。
―6時帰宅制度の真意と従業員への想い―
【ナレーター】
言いたいことが言い合える自由闊達な社風がポイントだと語る五嶋。
その社風に合わせ、様々な制度を取り入れているのだが、意図としてユニークなのが、6UPという夕方6時の帰宅を推奨する制度だ。
【五嶋】
浦和のご自宅に住んでいる開発企画者がいるとします。そこから南浦和のテクノセンターの往復の通いだけだとなかなか世間の変化というのはわからない。
そこで、6UPの時間を有効に使っていただいて、例えば今日は表参道に出てみるとか。そうすると違う環境が見えてくる。
シーンが変わってくると色々なものが見えてくるので。そういう時間の使い方もしていかないと、新しいものはなかなか発見できませんね。
【ナレーター】
従業員への出産祝金や保育園への自社商品の寄付など、内外複合で子育て支援を行うコンビ。その想いに迫った。
【五嶋】
一時的なその金額のことよりも、ご出産されてから長く働ける環境のほうがやはり重要だと思いますね。
当社は複合体だと思っているので、彼女たちや男性社員、色々な方たちがそれぞれの役割を遂行することで成り立っている会社だと思うんですね。
ですので、特に女性の意見というのはこれからすごく大事になるし、育児環境を考える上では、我々が考えるのではなく、女性社員自らが「こういうところを変えていってほしい」と言ってもらったほうがいいと思っているので、ぜひ、そういう意見も自然に出てくるといいなと思いますね。
―コンビならではのやりがいとは―
【ナレーター】
コンビで仕事をすることのやりがいについて、五嶋は、商品開発に最初から最後まで責任をもって携われることだと語る。
【五嶋】
当社に入社すると1から10までできます。
「自動車のヘッドライトを20年間やってきました。」という方はいますが、部品からすべてわかって、自動車1台くみ上げ全部できますという方はなかなかいらっしゃらない。当社は、ベビーカーだと、最初から最後まで責任をもって仕事ができます。
そういう醍醐味はありますね。例えば何かの理由でお辞めになった方でも、やはり色々な技術、総合的な技術が身につきますので、非常にやりがいはあると思いますね。
【ナレーター】
子育てが幸せだと思える社会の実現に向け、今後は海外へとマーケティングのステージを拡大・強化させる。
【五嶋】
当社は中小企業ですが、海外に目が向いています。海外でフィールドを広げる仕事もやりたいという方については、当社でそれが実現できます。人事から昨年営業に異動した女性が、来月から今度海外に1年間行くといった事例もあります。
今、そういった海外トレーニングも含めた色々な機会を、非常に多くつくっています。ですから、そういう海外に目を向けることができる人はチャンスだと思います。
【ナレーター】
保育サービスの拡大により、堅調に推移してきたベビー用品市場。
しかし2020年から続くコロナ・ショックの影響によるインバウンドの減少や、出生数の低下は深刻さを増しており、新たな需要の創出は市場の発展において重要と言っても過言ではない。
そんな中、ベビー用品市場におけるリーディングカンパニーとして業界をけん引する企業がある。コンビ株式会社だ。
ベビーカーやチャイルドシートを始め、多岐に渡る育児用品を提供する同社は、先進性あるモノづくりを原点として、子育てにイノベーションを起こすアイテムを次々に生み出す。
現在では機能性食品や化粧品、ペット事業も手掛けて国内のターゲットを広げるとともに、北米及びアジア市場を中心に、グローバルに事業領域を拡大している。
2021年1月よりコンビを率いる新社長が見据える、次代の成長ビジョンとは。
【ナレーター】
高校時代から英語に関心があった小堀は、野球部の部活動の後に英会話学校に通う日々を送る。異文化に触れた中で、あることについて衝撃を受けたという。
【小堀】
時間の概念です。日本人の場合、約束の時間に5分前とかに行こうと思いますよね。そういう概念が全然ない国の人もいるというのは衝撃的でしたね。
よくよく聞くと、すごく広い国の方で、交通網も発達しておらず次いつ会えるかわからないみたいな。極端な話、今回の出会いが一期一会になってしまう可能性もあると。
何時間待たせようが、会えること自体がすごいことだよね、という背景があるのを知りました。
日本人はまた会えることは当たり前ですよね。当たり前の上で何時に会うってなるんですが、海外の方は次会えるかどうかわからない。そういうベースがあるのかというのは衝撃でしたね。
【ナレーター】
大学進学後は、穀物に強みを持つ商社へと就職。当時の仕事内容について次のように振り返る。
【小堀】
先物商売なんですよ。先物商売ということは、1年後の商売を今契約するんですが、種を植える前に商売するんですね。
そうすると干ばつなどがあると、どれぐらい取れるかわからないですよね。ですので、天気予報の勉強をしました。
1年後の天気を予測するんですね。未だに明日の天気さえ分からないですよね。分からないにもかかわらず、でも何らかの予測をしないといけないので、そういう勉強をしました。後は為替ですよね。当然貿易をするので。
いずれにしても他の競合会社もいますからね。どっちがより正しい、良さそうな条件を出すかを競い合うわけですね、
今申し上げた為替の話もそうですし、天候の話もそうですし、どちらの意見が正しいのかをバイヤーの方が決めますので。そういう意味では非常に刺激的で、面白かったですよ。
【ナレーター】
その後、日本語教育の事業構想を持ったベンチャーへ転職。
なぜ商社からベンチャーへ移ったのか。その理由について小堀は次のように語る。
【小堀】
そもそもやりたい仕事だったんですね。
最初になぜ日本語教育ベンチャーに行かなかったかっていうと、その当時は日本語教師の資格がまだなかったんですね。それは誰でも働けるって裏返しなんですけれども、そうなると給与は当然低いです。
そういうこともあったんで、最初の商社に行った時には日本語教師ではなくても外国人と触れ合える機会はあるだろうし、十分に目的果たせるかなと思って行ったんです。
しかし途中で、「日本語教育ベンチャーつくるから来ない?」っていう誘いがあったので、では一回チャレンジしてみようかなということで転職しました。
【ナレーター】
転職から1年間、会社経営に携わった小堀だったが、事業は軌道に乗らず頓挫。区切りをつけて別の道へ進もうと考えた時に出会ったのがコンビだった。
【小堀】
色々お声がけした中で、このコンビだけがメーカーだったんですよ。また商社へ戻ろうと思っていましたので全然考えていなかったです。
コンビだけがメーカーで、ベビー用品。さらにその当時あまり気にしていなかったので、何をしている会社なんだろうなって思ったんです。
たまたまメーカーがコンビだったんですが、他になかったんですね、メーカーの選択肢が。その時に違うメーカーがあったらそちらに行っていたかもしれないですね。縁だと思います。
【ナレーター】
コンビ入社後は営業職として百貨店を中心に店舗を飛び回る生活を送る。その経験の中で、小堀が導き出した営業という仕事の本質とは。
【小堀】
おもちゃ売り場がありますよね。縮小の図を描いて、こういう配置にすることで売れるのではないですかという提案をするなどしていました。
後、提案が良ければイベントの時に場所を貸していただけるんですね。イベント用の配置も手で描いて。
要するに売り場のため、お客様のために役立たないと採用されないですよね。だからそういう絵をひたすら描いて提案し、これは違うよと言われてもまた描いて提案する。
ひたすら会社に戻らず、ずっと直行直帰して提案ばかりしていましたね。
しかしそういうのを繰り返すうちに評価される、認められる、採用されることも増えてきて。イベントをすると当然イベントキットみたいなものがあるわけですね。それを1日2、3カ所に設置し、そして土日には一緒に応援販売したりイベントをお手伝いしたりします。
それで終わると撤去しますよね。毎日搬入か搬出か販売か提案か、これをぐるぐるずっと繰り返していましたね。これが営業と思いますけどね。それは今もやっているメンバーはいますよ。
経営者プロフィール
氏名 | 小堀 英次 |
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役職 | 執行役員 |
生年月日 | 1966年7月1日 |
出身地 | 埼玉県 |
座右の銘 | 利他 |
愛読書 | 『生き方』稲盛和夫 |
尊敬する人物 | 両親 |
会社概要
社名 | コンビ株式会社 |
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本社所在地 | 東京都台東区元浅草2-6-7 |
設立 | 1957 |
業種分類 | その他の製造業 |
代表者名 |
小堀 英次
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従業員数 | 411名(単体) 1,211名(連結) 2,118名(コンビグループ)※ 2023年12月末現在 |
WEBサイト | https://www.combi.co.jp/ |
事業概要 | ベビー用品/乳幼児玩具などの開発・製造・販売輸出及び技術供与 |