株式会社アクセルスペース ~宇宙に挑む東大発ベンチャー!超小型衛星プロジェクトの舞台裏 ~

Vol.4 事業立ち上げ時の危機

株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村 友哉 (2015年10月取材)

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―事業立ち上げ時の危機―

【聞き手】

実際に起業をされてみて、最初は大変でしたか?。

【中村】

一番大変だったのは起業前でした。2007年に起業準備を初めて、2008年の夏に起業出来たのですが、最初のうちは起業できるかどうかわからなかったのですね。助成金をいただいていて、2008年度つまり2009年3月までの予算はあったのですが、それまでに起業しないとタイムリミットなのです。技術開発をしながらの営業です。

【聞き手】

会社にするからには、ただ単純に物を作っていればいいというわけでなく、売れないといけないわけですね。

【中村】

そうなのです。誰が使ってくれるだろうかと、こういう風に使えるんじゃないかなと我々が勝手に推測して、いろいろな企業のところに行って。

【聞き手】

例えばどんなところに行かれたのですか?

【中村】

おもちゃメーカーとか、地図メーカーとか。そういったところをいくつかピックアップして、アポとって、ちょっと話を聞いてくださいと行って。最初は面白がってくれるのです。人工衛星を自分で作れるんだと。でも30分くらい話をすると、それでうちはどうやって使えばいいのですかね、という質問になるわけですね。そうすると我々も困ってしまって、写真とか撮れますという話とかをして。写真撮ってどうしようかなということになって、やはり1時間くらいすると、非常に面白いけど、うちではなかなか使い方が思いつかないから、またちょっと考えておくねということになって、打ち合わせが終わるというパターンがほとんどですね。それで2008年になってもまだお客さんが見つからずに、本格的にこれはやばいと思い出して。

【聞き手】

物は作っているけれども買ってくれるところが現れない。

【中村】

全く現れないということで焦っていましたが、そんな時に本当にたまたまなのですが、ウェザーニュースさんの方から我々にアプローチしてきてくださったのです。

ウェザーニュースさんは船会社にたくさんお客さんがいらっしゃいます。地球温暖化が進んできて北極海の氷が溶けてきているので船が通れるのではないかという話を船会社が聞きつけて来て、そこを通るためのサポートをしてくれとウェザーニュースさんが言われていて。ウェザーニュースさんもどうやってサポートしたらいいのかなということを探っていく中で、当然ながらいろいろなリサーチをするわけです。北極海の様子を見るといったらやっぱり人工衛星というのはパッと思いつくので、衛星の画像を買うかということになりますが、衛星画像は1枚100万円とかするのです。既存の大型衛星から取る映像や画像はそれくらいするのです。船が北極海に入って出ていくまでの画像を買うコストがどれくらいかかるかというのを調べたら、2、3000万かかるらしいのです。

【聞き手】

しかも1回きりでは駄目なのですよね。

【中村】

3000万が画像だけでかかっても、船がそこを通ることによって浮くコストは大体マックスで1000万くらいなので、ビジネスにならないわけです。だから既存の衛星から画像を買うことはない、では他にどうやったらサポートできるだろうかと考えていく中で、中須賀先生とウェザーニュースの技術の担当者がたまたま知り合いだったことから、当時はまだ会社はないですが、学生がやろうとしているよと紹介してもらって、そこから始まりました。こういうことを考えていると説明を受けて、じゃあ次までに検討してきますと一生懸命検討しました。

【聞き手】

ちょっと道が開けたわけですね。一筋の光が差し込んできたと。

【中村】

これしかないと思って、提案を持っていて、いやいやこうじゃないよというのを繰り返して、大体半年くらいかかりましたけど、ようやくお互いが合意できるようなプランができて、よしこれをやろうとウェザーニュースさんの中で決めていただいて。それで我々も万を持して起業することができたということですね。

【聞き手】

いざ始まってみたらどうだったのでしょうか。

【中村】

衛星を作るのは順調に進んでいたのですが、いくつか大変なことがありました。やはり我々が大学で作ってきたものと、お客さんに作るものとは全然違うのですよね。学生のときの衛星というのは、自分たちで仕様を決めているわけです。

【聞き手】

作りたいものを作る。

【中村】

これ載せたいねと開発を始めても、難しそうと思ったらやめるとかを自由にできるのですが、ウェザーニュースさんの場合は目的がしっかりしているわけです。それを実現できなければ作る意味がないわけですから、お客さんと詰めながら、この機能を実現するためにはこれを載せないといけない、それが難航してもやめるわけにはいきませんし、信頼性などの面でも気を付けなくてはいけないことが全然違います。開発の仕方を変えないといけないということがありましたが、手本となるものがどこにもないですから自分たちで作り上げないといけない。そういったところはやはり苦労しました。それから、これまでは先生がやってくれていたロケットの調達や外部との調整も、基本的には自分たちで全部やらないといけないですし、会社経営とは何たるかを全くわからないでやっているわけです。当然ながら会社を作ってしまったら経理とかもありますし、法務とか財務とかいろいろやらないといけないバックオフィスの仕事もたくさん出てくるわけですが、その辺どうしましょうとか。

【聞き手】

3人いらして、3人とも技術者なわけですものね。

【中村】

我々だけではどうしようもないから、外部のサポートをしてくれる組織に頼ったりしながら、会社ってこういうものなんだということを、走り始めてから学んでいくというか、そういう自転車操業みたいな感じでやっていましたね。当初は。

【聞き手】

誰にもいわゆる社会人経験というのがないわけですよね。会社ってこんなものだよねとか、組織に入った経験が全くない。

【中村】

ないですからね。そういったところもウェザーニュースさんから学ばせてもらったというのが非常に大きくて、企業ってこういう風に意思決定するんだとか、会社ってこういう風に回っていくんだとか。ウェザーニュースさんは大企業ですけれども、やはりベンチャーマインドというのをすごく持っていて、新しいことにどんどんチャレンジしている。そういう意味では我々に通ずるところがありましたので、すごく参考にさせていただいて。時にはお叱りを受けたりなどを繰り返しながら、ちょっとずつ会社の体をなせるようにしていったという感じですね。

社長プロフィール

President's profile
氏名 中村 友哉
役職 代表取締役

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