アートグリーン株式会社 ~胡蝶蘭ビジネス成功から紐解く、ビジネスチャンス発掘のヒント~

Vol.2 起業後に発覚したまさかの落とし穴

アートグリーン株式会社 代表取締役 田中 豊 (2017年7月取材)

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―起業後に発覚したまさかの落とし穴―

【聞き手】

いざ会社を立ち上げる、という時は、まず何で起業されたのですか。

【田中】

3年8カ月間営業マンだったので、行ってきます、と言っていろいろな所に営業に行くのですが、その間は結構自由に行動できるのですね。そこで図書館に行って、今の時代ではどういった商売であれば資金や免許を要さずに起業できるか、将来性があるか、といったことを考えていました。

【聞き手】

働きながら情報収集をしていた。

【田中】

そうですね。

そして、はたと自分の会社を振り返ってみると、およそ5,000万円かけて、土地が自分たちのものになるわけではないような物を買う方たちの層に向けて営業をしていたので、営業先には偉い方たちが多いのですよ。そこで、偉い人たちはどういったことが好きなのか、どういったことを趣味にしているのか、調べてみよう、と思いました。 その時に、たまたまSTTの社長が、5,000万円のものを買ってもらっているのだから、三つのうちからどれかプレゼントしなさい、と言われているものがあったのです。 一つは、三越のボヘミアングラスというクリスタルグラス。5万円でした。もう一つは、明治屋の神戸牛。これも5万円でした。そして最後に、ゴトウ花店の胡蝶蘭。これも5万円でした。5万円の予算の中で、社長さんが一番喜びそうなものを選んで、自分の手で持っていってお礼をしなさい、というのが会社の約束事だったのですね。

そして、あの社長さんお花好きそうだな、盆栽やっておられたな、という方には胡蝶蘭を贈っていたのですが、調べてみると会社全体で、月間1,000万円ほどゴトウ花店に払っていました。その時に「この注文をもし自分の会社で受けられたら、それで生活できるな」と思ったんですね。

もう一つ、何でそこに行ったかというと、ここに1冊の本があります。これは『役員四季報』といって、1993年のものですね。ちょっと見ていただくと分かるのですが、ここに会社名が載っていて、その下に役員の名前が載っています。そして最後に、趣味が載っているのですね。絵画、ゴルフ、園芸など。世の中を動かしているお金持ちたちの趣味は一体何だ、と思いました。調べてみると、1位が読書、2位がゴルフ、そして、3位と4位が同じくらいで、園芸と旅行なのですね。

「あれ、ちょっと待てよ」と思いました。うちの会社が贈っている胡蝶蘭だけでも毎月1,000万円ほどあって、偉い人たちの趣味で園芸が3位か4位にランクインしている、と。それなのに、園芸業界には大きな会社が一つもない。人が生まれる時、結婚する時、亡くなる時、お花というのはつきものですし、年がら年中どこかでお花が贈られています。そしてお花を贈られた人は大喜びします。そういったことを考えると、この現状にヒントがあるのではないか、と思いました。そうして、私は元々お花が好きではなかったのですが、ビジネスとして胡蝶蘭事業を始めようと思ったというのがきっかけでした。

【聞き手】

フラワービジネスをやるにあたって、商品を胡蝶蘭に絞り、一点突破しようと目を付けられた辺りもさすがだな、と思います。

【田中】

お花、となるとたくさん業者さんがいますので、「これならあいつだ」という属性別の一番にならないと、小さい企業が一点突破していくのは難しいので、胡蝶蘭で勝負しようと決めました。

【聞き手】

その発想はすぐに会社の業績に表れたのですか?

【田中】

いえ、最初は全く売れませんでしたね。私は自分の会社で胡蝶蘭の注文を受ければいい、と思って独立したのですね。その時は非常に円満退社だったので、秘書室の同僚から「注文は田中の所に頼むから」と言われたので、とりあえず安定した売り上げは望めるな、と思って創業しました。

そして、STTで共に働いていた同期を誘って創業し、有限会社アートグリーンを2人でつくりました。それが1991年12月ですね。最初は僕一人で事業をスタートさせ、半年ほど経った頃にその同期が入って、STTに営業に行くと、秘書室の同僚は分かった、と言ってくれました。しかし、いつになっても注文が来なかったのですよ。どうしたのだろう、と思って聞いてみると「田中、本当に申し訳ない。俺はそんなに難しいことじゃないと思っていたのだけど、社長にこの話を持ちかけたところすごく怒られた」と。
なぜかと言うと、「田中は三越じゃないから」ということらしいのですね。つまり、ボヘミアングラスも、そこら辺に売っているグラスではなくて、三越のボヘミアングラスだから、(相手先の社長は)高いものをもらったと思うのだ、ということです。創業して間もない有限会社アートグリーンの花では贈答の効果がない、と言われたそうです。その一件で、ブランドというものがすごく大切なのだ、というのが分かった時には、もう創業してしまっていたのです。

注文は1件も来ませんでした。一緒に創業に参画してくれた同期は、私と違って6人くらいの部下を持っていて、年収も1,000万円を超えるような人でしたから、彼の人生を狂わせてしまったな、という思いもあって、創業当初は2人でものすごく苦労しましたね。

【聞き手】

そういった状態がどれだけの間続いたのでしょうか。

【田中】

本音を言うと、4、5年続きました。黒字になるまでに5年くらいかかっていると思います。

【聞き手】

辞めよう、と思ったことは?

【田中】

私はないのですが、もうひとりの人間を僕が誘って引きずり込んでしまったので、申し訳ないと思い、彼にそういう話をしたことは何度かあります。合併の話もありました。

手前みそになってしまいますが、2人とも営業としては確かな腕を持つ営業マンでしたから、君たちうちに来ないか、といった話や、うちの事業部の一つとしてフラワービジネスをやらないか、といった話をいただきました。その都度彼には、申し訳ないからそこに入るか、という話をしたのですが、いい大人が2人でやると決めたのだから、本当にダメになるまで頑張り抜いてみよう、と言ってくれたので、辞めずに済みました。

社長プロフィール

President's profile
氏名 田中 豊
役職 代表取締役

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