Vol.3 社長の重責を感じた決断
インタビュー内容
―社長の重責を感じた決断―
【ナレーター】
その後、2005年に社長に就任。現在に至るまで社長の重責を最も感じたと語る、あるエピソードに迫った。
【松浦】
長いお付き合いをしている得意先さんでしたが、そこの会社がある会社からTOB(株式公開買付)を受けたことで、私は「どうしよう」と悩んでいました。当社もたまたまそこの会社さんの株を持っていたのです。
選択肢は3つですよね。賛成か反対か白票かという3つの選択です。賛成をすればその会社を裏切ることになりますから、だいたい皆さんも白票で考えられます。それで、たまたまTOBを仕掛けた方の会社に行ったときに、「当社も白票にします」と話をさせていただきました。
すると「ドアを閉めてほしい」と言われたのです。ドアが閉まってから1時間半、その会社の社長に延々と説教をされました。
「そもそも、どうしてそういう結論になったのか」と聞かれたので「取締役会で決めました」と答えたところ、「取締役会で決めるなら、社長はいらないじゃないか。最後に決めるのは社長だ。お前がどう考えるかが大切なのだから、そこをしっかり考えないとダメだ」と叱られたのです。
そこで、私は「仮に賛成票を投じれば、あの社長は恐らく自分のことを買ってくれるだろう。反対側の会社はどうかわからない。あとは天秤だな」というふうに考えました。
年が明けて最初の日に、当時の幹部で卸のトップの社員と2番目の社員に、「俺は賛成しようと思う。どうだろうか」と相談したところ、「それはそれでありだと思いますよ」と返答をもらい、「賛成します」と話をしにいきました。
TOBを仕掛けた方の会社の社長は喜んでくれましたけど、逆にもう片方の会社の社長は絶句でしたよね。でももう、それは謝るしかなかったので、顔も上げられずに「申し訳ない、申し訳ない」と、ずっとひたすら謝って、なんとか逃げるように帰ってきました。
今思えば、結果的には良かったのですが、当時は自分でもあんな経験は嫌だという決断でしたね。
自分としては考えに考えた末に「これで行く」と決めたので、決断は変えませんでした。役員会でも「申し訳ないけど、私はこれで行きますから許してください。みなさん賛成してください」ということで実行しました。

経営者プロフィール

氏名 | 松浦 由治 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1958年4月3日 |
座右の銘 | 一期一会 |
愛読書 | 八甲田山死の彷徨(新田次郎) |
尊敬する人物 | 父・叔父 |
会社概要
社名 | ピップ株式会社 |
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本社所在地 | 大阪府大阪市中央区農人橋2-1-36 |
設立 | 1946 |
業種分類 | 卸売業 |
代表者名 | 松浦 由治 |
WEBサイト | https://www.pipjapan.co.jp/ |
事業概要 | 医療衛生用品、健康食品、ベビー用品、ヘルスケア用品、日用雑貨、医薬品、医薬部外品、医療機器などの卸販売。ピップエレキバン、ピップマグネループ、スリムウォークなどの自社開発商品の製造・販売 |